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第14話

アルファに近付くなと言われても。 キタノとはいつも一緒なのだ。 キタノはアルファでいるのが嫌なので、強い薬を投与されて本能を抑えている。 だがそれは、オメガのフェロモンの量によっては効かない可能性がある。 ケイの抑制剤がちゃんと効いたとしても、キタノは衝動を堪える必要はあり、それは、かなりの意志が必要なのだという。 もし、ケイの抑制剤がケイに効かなかったら? こればかりは運なのだ。 効く効かないは体質や体調により完全じゃない。 ケイに出来るのは番防止の首輪を着けることだけだ。 ヒートにより始まってしまったセックスを止めることはケイにもできないからだ。 キタノとそうなるのは嫌で。 怖くて。 でもキタノと離れることは考えられなくて。 そして、今日も病院まで迎えに来てくれているのはキタノなのだった。 2人は恋人だと思われていて、二人はそれを否定しなかった。 ケイを欲しがるアルファがいたし、何よりケイはキタノに近づく女の子達を遠ざけたかったからだ。 酷いことをしている自覚はある。 キタノの気持ちを利用している。 恋人になるのは怖いくせに。 でも離さない。 そしてキタノもケイが恋人じゃないと否定しない。 キタノの気持ちを知っててずるいケイを許してくれる。 罪悪感。 そう、罪悪感なんてずっとある。 ケイは迎えに来たキタノにむかって微笑んだ。 上手く笑えただろうか。 キタノの笑ってるみたいな顔が少し強ばったからそうではないのかもしれない 「大丈夫ですか」 心配そうに聞かれる。 「分かってたことしか言われなかったから大丈夫」 ケイは言う。 キタノがドアを開けてくれる車に乗り込む。 大きさこそデカいがボロボロのボックスカーだ。 デカい車じゃないとキタノか入れないだけの理由だ。 後はキタノの立体作品の運搬や、作品の材料を載せるためだったりする。 2人で写生にいく時の休憩場所にもなる。 キタノとケイの車だ。 少しお金になってきた活動費で買った。 この中で、キタノと2人背中合わせで眠ったりもしたことがあったのだ。 2人とも一睡も出来なかったので二度と泊まりはなかったけれど。 キタノの匂いに、何度も縋り付きそうになったのを覚えている。 でも。 怖い。 キタノとするのは怖い。 何よりも怖い。 キタノは考えこんでいるケイを運転席から見つめる。 なかなか、発車しようとはしない。 「先輩・・・オレといるの嫌ですか」 小さな声で言われた。 少し震えてた。 大きなキタノが。 「それはない」 断言した。 断言できるのはこれだけだ。 キタノが笑ったのが切なかった。 ごめんって言いたい。 自分から解放してやりたい キタノならどんな女の子でも手に入る。 そう、オメガだって。 オメガ達はアルファを恐れてもいるから、支配的じゃないアルファであるキタノを欲しがるオメガもいるだろう。 特にまだ、番を得ていない自分のようなオメガには。 そういうオメガならキタノに抱かれるだろう。 「離れたくない」 そう言ったのはキタノで、その声の強さに少し驚いた。 「絶対に先輩が嫌がることなんかしない」 キタノがそう思い詰めるように言ったから。 「うん」 ケイは頷くしかできない。 出来ないことを許して欲しかった。

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