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第15話
とうとう初めての発情期が来た。
というよりも安定させるための薬もケイは飲んでいて、予定とおり引き起こされた発情ではあった。
朝起きた時から熱っぽい。
だからそうなのだとわかった。
連絡を入れ、全てをキャンセルにする
そして少し迷ってキタノにもメッセージを送る。
「始まった。しばらく会えない」と。
キタノからは数秒で沢山のメッセージで送って来られたが、どれも心配するもので。
「部屋に籠るから心配するな」とだけ送った。
フェロモンがどれだけ抑えられているのかは、外に出ないとわからないけれど、緊急用の強烈な抑制剤を持ってはいても出る気にはならなかった。
外にはアルファがいるのだから。
そして。
ケイは薬の効き目でぼんやり眠くなるのを感じる。
意識が遠くなる。
これで眠っている間に発情期が終わるならそれでいいかと思った。
だが。
ケイは思い知る。
そんな生易しいモノではなかった。
数時間後。
ああっ
ああっ
ああっ
ケイは泣き叫ぶ。
指でずっと中を弄っているのに、全然満足出来ないのだ。
ケイは指だけで後ろで上手にイケるようになってるし、乳首でだってイケる。
でも。
いつも以上に濡れそぼった穴は何回イっても満足してくれない。
奥から疼いて、零れて欲しがる。
何かもっと、熱くて硬い大きなモノを。
じゅくん
じゅくん
また溢れる。
疼く度に欲しくて腰を揺らして、感じるそこを指で擦り立てる。
鋭敏になった身体は、それにいつも以上に感じるのに、足りない。
穴を弄りながらいつもはもう弄ることの無くなっていたペニスも弄る。
射精したら楽になるかと。
でも。吐き出してもはきだしても、吐き出しながら中でイっても、身体は納得してくれない。
薬が与える眠さにしばらく微睡み、そしてまた飢えに身体を貪りだす。
「ベータのパートナーにセックスしてもらいなさい。それでもすこしは気が紛れるから」
そう言った医師の言葉の意味が【本当に】わかる。
何かで後ろを埋めてしまいたい。
その衝動が込み上げてくるのだ。
でもケイは指以外使ったことがなかった。
怖いから。
指だって本当はしたくないのに。
でも今は、欲しくて欲しくてたまらなかった。
泣きながら指を入れて、尻を動かし、少しでも強さを感じようとする。
尖った乳首を摘んで、感じながら足りないと泣き叫ぶ。
欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい
「嫌あ!!!」
そんな自分に嫌悪して泣き叫ぶ。
そして奪われた体力と薬が眠に引き込む。
夢の中でも飢え続けた。
終わらない欲望は。
ただの苦しみでしかなかった。
やっと3日が過ぎた。
ボロボロになった身体でおきあがる。
まだ疼きはするが、がまんはできる。
泣きながら荒れ果てた部屋を片付け、時折トイレで自慰をした。
身体への負担がそれほどでもないのは、オメガがアルファに抱かれる為の生き物だからだと思い知らされて、ゾッとする。
オメガはアルファのためにいる、そのための生きものなのだ。
ベータなら死んでしまうような行為にも耐えられるのだ。
そう思って、
ケイはまた泣いた。
窓を開け、食事をとり、三日ぶりに携帯を手にする。
キタノからのメッセージでいっばいだった。
心配して。
心配して。
携帯を抱きしめた。
キタノに会いたかった。
それで少し落ち着いた。
キタノの言葉をみるだけて。
まだ身体は疼くが、やっと余裕が出てきた。
このマンションにはアルファはいないし、郵便物でもとりに行こうかと思った。
フェロモンがでていたとしてももう相当弱いはずだ。
ドアを開けようとして、鍵をひらこうとして、開かない。
誰かがドアの前にいるとわかる。
だからわかった。
「キタノ、そこにいるんだろ?」
ドアの向こうに言う。
「先輩・・・」
キタノの弱った声。
いつから?
おそらく3日前からだ。
「ドアから離れて。少し開ける」
ケイは警告した。
キタノは下がり、フェロモンが届かないとされる距離まで下がる。
両腕を広げた距離以上を推奨されているが、これはもちろん人によって異なる。
「先輩・・・」
キタノが泣いた。
ボロボロなのはキタノだった。
「もう大丈夫だから。あと何日かで終わるから」
慰めたのはケイだった。
キタノはそれからも、ケイが発情期に入ると部屋の前で待つようになった。
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