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第16話
発情期は来る度辛かった。
眠れる薬を限界まで強くしてもらうことしか出来なかった。
幸い、フェロモンの濃度は抑えられているし(それでもアルファによっては反応するらしい)、発情期も3日程で収まることが分かり、そこは安心した。
「セックスしないで耐えてるのかい?」
と医師には驚かれたけれど、キタノ以外とのセックスは考えられないし、キタノとはしたくないし、せめてとすすめられたディルドの類いも断った。
誰にも何にもこの身体に入ってきて欲しくなかった。
部屋の中でキタノの名前を叫ながら、欲しくて堪らなくて泣きながらイキつづけても。
鍵をかけたドアの向こうに欲しい男が座っていても、ケイは耐え続けた。
あの川原でキタノに抱きしめられてから、キタノから触れられたことはなかった。
触れなければならない時は注意深く、最低限で。
なのに時折目があの日のように飢えていて。
でも、キタノは触れない絶対に。
それに安心してるのに、発情期の時も発情期じゃないときも、自慰の中ではそのキタノの目を思い出して狂うのだ。
怖い。
怖くて堪らない。
オメガは嫌。
オメガとアルファでは、キタノと自分が壊れてしまう。
キタノ。
キタノ。
名前を叫びながらイキ狂い、その目を思い出し何度も達する。
「・・・セックスしなさい。壊れてしまうよ」
医師は忠告を超えた言葉を告げる。
こうやって壊れるオメガもいるのだと、医師は言った。
「だから20歳までに番を作ることを推奨されるんだよ」
医師が心配してくれているのはわかったが、できないものは出来ない。
そんな風に1年がまた過ぎた。
ただ、ふと思った。
キタノは。
アルファの本能をどうやって耐えているのか。
強い寿命を縮めるような薬を使いつづけているキタノにも、それでもその欲求があることをケイは知ってる。
ベータと結婚したアルファが本能のままベータを殺してしまわないように、他でオメガを抱いている話も医師から聞いた。
ベータと結婚したオメガの中にはアルファに抱かれるオメガもいるという。
事情のあるアルファオメガのマッチングシステムは存在しているのだ。
綺麗事だけでは済まないのだ、それがアルファでありオメガであることだと医師は言った。
おそらく、キタノもそれを勧められている。
じゃあ、キタノはどこかで、そうしてるの?
訳ありのオメガを抱いて耐えてるの?
ケイの胸は痛む。
キタノとセックスしないくせに。
それには耐えられないなんて。
気を紛らわすためにベータの女の子としているのかもしれないともおもった。
ケイがベータでもいいからセックスしろと言われているみたいに
ケイは思っただけで泣いてしまったが、キタノに聞くことは出来なかった。
聞けるわけがない。
キタノの気持ちを知ってるのにこうしてキタノを留めているのは自分なのだ。
「先輩髪に落ち葉が」
細心の注意で髪にできるだけ触れないようにして落ち葉を取るキタノ。
キタノとケイが出会ったのはケイが14歳 キタノが13歳。
そして今、ケイは21歳 キタノは20歳。
8年が経っていた。
このまま、2人は一緒にいられるのだろうか。
ケイは不安に思っていた。
そんな時。
オメガが現れたのだった。
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