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第17話
そのオメガはキタノが好きなことを隠そうとしなかった。
18歳。
まだカプセルを入れている年齢で、番を見つけていないオメガだった。
美術大学だけは優秀であることにアルファもオメガもベータもない。
だから一人の学生として入ってきたオメガだった。
「アルファは嫌い」と公言してて、だからこそのキタノだったのかもしれない。
面と向かって「好き」と言われてキタノは面食らっていたが、「好きな人がいる」と隣りのケイをみつめながら答えた。
「僕とセックスすれば考えも変わるかもよ?」
あっけらかんとそのオメガは言った。
名前はショウ。
奔放なオメガで、アルファと以外は気軽にセックスしていた。
アルファとしない理由は「アイツらウザイ」という理由らしい。
「アルファ並の身体なら、結構良いセックスしてくれるんじゃない?」
ショウのアプローチはあけすけだった。
「好きな人がいるって!!」
キタノにしてはつよい口調で言ったが、ショウには通じない。
アルファとの学校で育ったオメガはアルファに甘やかされるのに慣れているのでわりと空気を読んだりしない。
でないと、アルファにいいようにされるというのはあるかもしれない。
オメガはアルファを振り回すくらいでないと、みたいないなことはオメガの医師も言っていた
だからショウは平然とキタノに言う。
「一度も試してみないで僕よりその人たちが良いなんて言うのおかしくない?」
キタノはもちろん、ケイもめまいがした。
だが。
そうだ、とも思った。
セックスも出来ないケイといるより、ショウの方が。
キタノがショウの嫌いなアルファだと知ればまたショウの気持ちも変わるのだろうか。
でも、キタノがアルファだと分かっても、キタノはアルファ達とは違うアルファなのだ。
ショウを支配しようとはしないアルファなのだ。
ショウも気に入るかもしれない。
それに。
ショウだって発情期が来るのを恐れているのに違いない。
いくら性に奔放でも、そんなモノとはヒートは違う。
違うのだ。
ヤキモキしているケイの前で、キタノは珍しく本気で怒った。
「俺は俺の好きな人以外は要らない。迷惑だ!!」
そして、何年かぶりにケイの腕を掴んで歩き出した。
まとわりつくショウに「着いてくるな」と怒鳴りさえした。
ケイは久しぶりのキタノとの接触より、そんなキタノに驚いた。
人気のない場所までくるとキタノは慌てたように掴んでいた手をはなした。
そして跪き、ケイを見上げる。
クンクン鳴いて甘える大きな犬みたいに。
「先輩だけです。誰も要らない。誰にも触れてない。先輩だけ」
切ない声で言われて、キタノに悩みを見透かされていたことを知りケイは真っ赤になった。
「離れないで。嫌わないで。好きです、先輩。嫌がることは何もしないから」
キタノの声は痛切で、その目の痛みも本物でケイはその目を受け止められなかった
「知ってる」
小さい声でいうのが精一杯で、でも、でも。
でも。
「苦しまないで。俺はこれでいい」
キタノの声はどこまでも優しい。
でも、そう思えないのはケイで。
そして、それがおこったのだった。
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