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第19話

冷たい床に押し倒された。 キタノはそれでも、ケイの顔の上で涎を落としながら耐えていた。 うなり震え、ギラギラした目だけが光る。 「キタノ。もういいんだ」 ケイからキスをした。 ケイの唇が何度かキタノに触れて。 離れた。 突然キタノが吼えた。 泣きながら吠えて。 そしてケイの唇をキタノの唇が荒々しく塞いだ。 押し付けられ、喰われる。 それは捕食だった。 でも。 強く噛まれて吸われる舌は淫靡だった。 注ぎこまれる唾液は恍惚だった。 ケイの咥内を貪る分厚い舌は喉近くまでを蹂躙し淫蕩の意味を教えてた。 ケイはただ、圧倒されていた。 「甘い・・・」 苦しいようにキタノが囁く。 ケイは身体が熱を帯びているのに気付く。 キタノに当てられて発情しかけているのだ。 だからケイはキタノに願った。 欲しいアルファではなく、欲しい男を手に入れたかったから。 発情してしまえば。 欲しいのはただのアルファになる。 「キタノ、挿れて」 ケイは自分のズボンを下ろしながら言う。 それでもキタノは逡巡していた。 ああ。 愛しい男だ。 これはケイの大事な誰にも渡したくない男。 「オレのモノになって。おまえを死ぬまで離さない」 そう言ったのはケイだ。 アルファなのだと。 死ぬまで執着し、オメガを逃がさないのはアルファなのだと。 ケイはそう恐れていた。 違う。 少なくともケイとキタノは違う。 キタノを縛り付けて離したくないのはケイなのだ。 死ぬまで誰にも渡したくないさわらせたくない。 「そんなの・・・そんなの・・・もうずっと前から!!」 キタノは唸った。 そして、ケイの脚からズボンも下着も抜いて、肩に担ぎあげ、自分のズボンからアルファ特有の形態のペニスを取り出し、濡れそぼったそこにあてがった。 ケイは少し焦った。 ちょっとだけちょっとだけ。 「少し・・・待っ・・・」 言い終わる前に貫かれていた。 一気に深く。 「待たない・・・またない・・・十分待った!!!」 叫んでいたのはキタノだった。 ケイは痙攣していた。 熱い杭で刺しつら抜かれたのだ。 それは死のように熱い 「ケイ・・・ケイ・・・可愛い・・・」 ヒクヒクしているケイの首筋を血が出るまで噛んで、愛しくて堪らないかのようにキタノが呻く。 キタノがケイを名前で呼んだのは始めてだった。 「可愛い!!」 キタノはケイの腰を強く掴んだまま、激しく動き始めた。 ケイは白目を剥いて絶叫した。 巨大すぎるペニスは初めてのケイのそこを引き裂くように動いたから。 でも。 確かに。 そんな行為に。 ケイは感じていた。 オメガなのだと。 思い知らされた。 「オレ以外を許さない!!」 それでもケイは叫んだ。 これはアルファとオメガの交尾じゃない。 気の狂った支配的な男が、哀れな被害者を奴隷にするセックスなのだ。 間違った愛を持ってるのは。 ケイの方だった。 「はい。ケイだけ。ケイ以外いらない」 せっかくアルファであることから逃れていたはずの男が、アルファにされる。 それもこれもケイのために。 「なら。いい」 ケイは許した。 自分を喰らうことを。 そして。 愛しい男を獣に変えて。 自分という檻の中に閉じ込める。 キタノが吠えて。 ケイはアルファに喰われるオメガになった。

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