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「は?」  雲行きが怪しくなってきた。想太はなおも話し続ける。 「こんなオレだから誰も近づいてこないだろうと思ってたのに、翔吾は、いともたやすくオレに話しかけてきた。その後もずっと仲良くしてくれた。嬉しかった。友達でいたかった。でも、もう無理だ」  想太がにじり寄ってきて、あぐらをかいた俺の足を挟むようにして両手をついた。驚いているうちに、想太の手によって俺の身体が床に押しつけられる。 「酔ってる?」  少しでもいいから、冗談にしたくて、笑いながら言ってみたが、想太はいたって真剣な顔つきで俺を見下ろしている。 「うん。じゃなきゃ、こんなことできないよ……」  俺の目を、真っ直ぐに見つめてくる。 「何度も諦めようとした。好きになりたくなんか、なかったのに、どうしようもなく好きなんだ」  ぽたぽた。何かが落ちてくる。最初は雨漏りかと思った。でも違う。想太の涙だった。 「好きだ。翔吾。ごめん。本当にごめん、オレ、翔吾のことが好きなんだ……」  涙が雨のように俺に降り注いでいた。 「ごめん。お前のことは好きだけど、恋愛感情じゃないと思う」  やっと絞りだした言葉は、想太の気持ちを拒絶する言葉だった。 「はは。そうだよね。分かった。これからも、友達同士でいよう。今までできたんだから、大丈夫」  想太が笑った。無理をして表情を作っていることは分かったけれど、俺はこの場をしのげたことにホッとしていた。 *  翌日からも授業で会えば普通に想太と話せたし、無視されることはなかった。元通りと思いきや、俺と話している間にも時折、傷ついた顔を見せるようになった。モヤモヤ、ズキズキする。  無理して笑うくらいなら、無表情でいてくれた方がましなのに。  ――そうだよな、やっぱり元通りなんて無理があったんだ。俺は大事な友達にこんな顔をさせるようなことをしてしまったんだ。  想太を見るたびにつらくなった。やがて、想太の方から避けられるようになってしまった。

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