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5.翻弄されて☆

いつもと雰囲気が違うテオドールに戸惑い、なんとか身体を離そうとするが力では元々敵わないのでビクともしない。 「何考えてるんですか!テオ、離してください!」 「暴れるんじゃねぇよ。やべぇな、すげぇイイ匂いがする」 テオドールは酔っているような声色でレイヴンの首に顔を押し付けて鼻を擦り付けると、すうっと匂いを嗅ぎだした。ふざけているにしても様子がおかしいのが気になり、本気で抵抗するとさらにレイヴンの身体を強く抑えつけて無理矢理に唇を添わせる。 「なぁっ!な……こんなこと、している場合じゃ……」 「ちょっと食わせてくれよ。こんな美味そうなのは耐えられねぇ」 やはり普段とは違う様子に違和感を感じて暴れるが、無視された挙げ句にジュルッという水音と共に首筋を舐められる。妙な気持ち悪さに身震いをしたところで、ふいに、鋭い痛みが走る。 「つぅっ!」 「最初だけ痛いかもしれねぇが、すぐにヨクなるからよ」 「意味が分からな……」 首に何かを突き立てられたような痛みに顔を顰めていたレイヴンだったが、急に首から熱を放っているような、妙な感覚に襲われる。 「毒……?なんで、あつ……い」 「やっぱり最高だよなぁ……」 テオドールは相変わらずどこか恍惚とした表情でレイヴンに顔を寄せているままだった。じわりじわりと首から熱が広がり、レイヴンの身体の力が抜けてくる。 「テオ……俺に……何をして……」 「レイヴンを俺のモノにしたんだよ。堪らないだろ?身体が疼いて。心配しなくてもこれからじっくりと可愛がってやるから……」 「ぁ……ぁう……」 テオドールが耳元で話すだけで頭がぼうっとしてくる。身体は熱をもって言うことを聞かない。 意識がふわふわとしてきて、ぞわぞわと頭のてっぺんから爪先まで痺れるように普段より何倍も感じてしまう。 レイヴンから漏れる声も次第に甘さを増していき、触れられてもいないのに表情も蕩けてくる。 気を良くしたテオドールが印を付けたレイヴンの首筋を何度も撫でる。灯火(ライト)が消えてしまった室内は暗闇に包まれていたが、指先が先程付けた2つの小さな穴に触れる度にレイヴンがさらに身体を震わせて嬌声を上げた。 「ひぁっ、あぁんっ!」 「イイ声。なぁ、もっと聞かせろよ」 強引にレイヴンをベッドに押し倒し、もっと貪ろうとしたところで―― また扉がバンッ!と大きな音を立てて開いた。 「はぁ、はぁ……いる?ここにいる?」 息を切らせて扉に手を当てて声を上げたのは、先程穴へと落ちてしまった聖女だった。必死の思いで戻ってきたのか、服と髪が少々乱れていた。聖女は暗がりでも2人の姿をしっかりと捉えていて、ふらつきながらもベッドの方へと少しずつ歩み寄っていく。 「ぁ……聖女……さま?」 レイヴンが残る理性を振り絞り声を上げるが、テオドールは無視してレイヴンの唇を乱暴に奪う。 「んっ、ん……」 レイヴンがまた熱に流されそうになり、必死に耐えようと力の入らない手でテオドールの身体を押し返そうとするが、やはりビクともしない。 「……テオドール、ワザとやってるだろう?自覚がないフリをして、この状況を楽しんでいるな?」 それでも何も言わずレイヴンに夢中になっているテオドールと、戸惑っているがどうにもできないレイヴンを交互に見据えた聖女は、素に戻って低い声を出しながら距離を詰める。 「いつまで人を無視するつもりだ?」 「煩ぇな……ったく、いいところなのに邪魔するんじゃねぇよ」 テオドールが鬱陶しそうに言い放つと、両肩をワナワナと震わせた聖女が持っていた杖を構えた。

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