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7.地下にいたのは
足元に気をつけながら地下へと続く階段を下りていく。手元の灯火 だけが頼りだ。地下に下りた途端に不快感が増してくる気がして、レイヴンが口元を手で覆う。
「何だか息苦しさが増したような……」
「やっぱり魔力 とも違う息苦しさだな」
「生者には影響があるのかもしれないわ。2人ともこれを身に着けて」
聖女が二組の首飾りを手渡す。シンプルな作りの首飾りの先に透明な宝石が付いている。
「これは?」
「私が力を込めたものなの。亡者のような悪しき力に対して効力を発揮するはず」
テオドールは渋々、レイヴンは聖女に付けてもらう。すると、2人から息苦しさが消えて呼吸が楽になった。
「気に食わねぇが、楽になるのは確かだな」
「でしょう?」
「ありがとうございます聖女様。ところでテオ、この先は行き止まりみたいですが……」
テオドールの先導で地下を進んでいたのだが、突き当たりになってしまった。
「階段以外は行き止まりだったから、私も階段を上がってもどったのだけれど。テオドール、この先に何かあるの?」
「あぁ、あるぜ?何か仕掛けがあるんだろうが、壊した方が……」
「ダメですよ!真面目に探しましょう!」
レイヴンが止めるので仕方なく探知 でテオドールが仕掛けらしきものを探す。暫し集中していると、テオドールがひたりと壁に触れてグッと壁を押し込んだ。すると、動くはずのない壁の一部が凹み、鈍い音を立てて右にずれていく。
「あ……壁が、動いていく……」
「この奥に空間があるみたいだな。この奥で待ち構えているみたいだぜ?暇なのかァ?」
「そういうことができるなら、もっと早くやってほしかったのに。もう!いいわ、行きましょう」
ニヤニヤ顔のテオドールをひと睨みし、さらに奥へと進んでいく。
温かいような冷たいような空気が漂う中、3人は1つの開けた空間に辿り着いた。何本も並ぶ蝋燭がボッという音を立てて順に灯ると通路を照らす。
奥の高台の上に黒く染まる花が飾られ、その中に黒い棺が置いてあった。
待ち構えていたのか、その上にはふわりと浮かんだ人影が見えた。
「折角愉しませてあげようとしたのに、残念だな」
「悪くはねぇが、頭の中でいちいち煩ぇんだよな。俺は集中して可愛がりたいってのによ。お喋りな男は嫌われるぜ?」
テオドールが軽口で応戦するが、レイヴンと聖女は警戒して身構える。ふわふわと浮かんで笑うのは怪しげな笑みを浮かべる美形の男だ。美しいシルバーの長髪が暗闇で光っているように見える。
黒の燕尾服のようなカッチリとした服装に黒いマントを羽織っており、彼がこの城に住んでいる吸血鬼 なのだろうと一目瞭然だった。
「テオドール、時間を稼いで。動きを止めてくれたら私がなんとかするわ」
「まぁ、蘇らねぇようにするには聖女様の聖なる力じゃねぇと無理だからな。それまで遊んでやるよ」
「俺も微力ながら協力します。これ以上好き勝手される訳にはいきませんから」
3人と異形の1人で睨み合いが始まる。聖女は魔法使い2人に守られるように一歩下がり、杖を握りしめるとこの場で祈り始める。
その意味を理解した吸血鬼 の方が先に動く。
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