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第5話
「なぁ、やめろって! やっぱヨリ兄だったんだろ? 分かってんならもういいだろ?」
シュウの口振りから察したヒナが確認する。
「……かーもって事。 兄貴だったとしても知るわけねーじゃん? 一緒に行きてぇけどぉ俺ら今から親戚の集まりがあんだわ」
「え……いや、でもさ……」
制止するアキを押し退け、畳み掛けるようにシュウは饒舌 になる。
「もし兄貴だったら可哀想だろ? こんな暑い中飲まず食わずで踊るんだぜ? 一晩中、ひとりでーーーーなぁ? ヒナ、可哀想じゃね? 」
「そう、だけど……」
正直、行きたいと言う気持ちはヒナにもあった。純粋に不憫な舞手を想っての事もあるが、駄目と言われれば気になってしまうのも人間の性である。
白鬼の宴を妨げてはならない。
顔を覗かせた良心が、石段下に佇む 男達に視線を送らせた。
それに気付いたシュウはより一層口角を引き上げ、ヒナに詰め寄る。
「見張りは俺らがどうにかするってー。 バレたら一緒に怒られてやっから……なぁ?」
暫く考え込んでいたヒナだったが、好奇心には抗えず小さく頷くーーそれを見たアキは、シュウのだらし無く開いた襟元 に掴み掛かろうとするーーが、その腕はいなされ、逆に溝落ちに拳 を食らっていた。
「ーーっ!」
「こっわ~。ただの遊びにガチギレすんなよー。いい子ちゃんだな、お前は」
膝を付き蹲 っていたアキが再びシュウに向かい、取っ組み合いが始まってしまった。ヒナも止めに入るが、力及ばず二人の間からはじき出されてしまう。
尻餅をついたヒナにシュウからアイコンタクトが送られる。
「ヒナ! 誰か呼んでこい!」
「はぁ?! 誰も居ねぇじゃ……」
辺りを見渡しヒナは見つけてしまうーー先程目に入っていた見張りの男達だ。
シュウと視線が絡み、再び目配せされる。「行くな!」と言うアキの声も聞こえては居たが、為す術もないヒナは男達の方へと走り出していた。
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