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第6話

暗闇に取り残されたヒナは、真っ直ぐと伸びた石段を見上げる。勢い任せに、駆け上がって来てしまい、あと少し上がれば入口が見えるのだが、今更ながら自身の暴挙に後悔の念がこみ上げ足取りは重い。かと言って、下からは喧嘩を止めているであろう男達の怒号(どごう)(かす)かに聞こえ、もうひとつの選択肢も選びたい気にもなれない。 ーー戻ったら……怒られる、よな? なんで俺がこんな事……。 ビニール袋の中身を覗きながら、シュウへの恨み言を思う。中に入ったラムネの瓶は汗をかき、中をしっとりとさせている。 ふと、別の思いも浮かんできた。 ーーぬるいラムネって、まずいよな? うん、うんと頷き、自問自答をしていると見る見るうちに足は軽くなっていき、いつの間にか鳥居まで辿り着いていた。 ーーやべっ。 何かが動いていた。 松明(たいまつ)の明かりが届かない暗闇の所だったが、白い物体が移動しているのははっきりとわかった。 咄嗟(とっさ)に隠れた柱の影から覗き、目を凝らす。 ーーやっぱ……いるな。 長い白髪が左右に揺れる様は、帰りに見た白鬼そのものでヒナは確信する。 だが、散歩でもしているかの様子に思わず口に出してしまう。 「……踊って、ねーじゃん」 静寂の中で、ヒナの声が響く。 思いの外通ってしまった声は白鬼にも届いていた。 単調な石畳(いしだたみ)を叩く音が大きくなるに連れ、ヒナの鼓動は早くなる。焦りで思考が纏まらないーーもう、どうとでもなれ、と半ばやけになり自ら白鬼へと歩み寄っていった。

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