6 / 19
第6話
暗闇に取り残されたヒナは、真っ直ぐと伸びた石段を見上げる。勢い任せに、駆け上がって来てしまい、あと少し上がれば入口が見えるのだが、今更ながら自身の暴挙に後悔の念がこみ上げ足取りは重い。かと言って、下からは喧嘩を止めているであろう男達の怒号 が微 かに聞こえ、もうひとつの選択肢も選びたい気にもなれない。
ーー戻ったら……怒られる、よな? なんで俺がこんな事……。
ビニール袋の中身を覗きながら、シュウへの恨み言を思う。中に入ったラムネの瓶は汗をかき、中をしっとりとさせている。
ふと、別の思いも浮かんできた。
ーーぬるいラムネって、まずいよな?
うん、うんと頷き、自問自答をしていると見る見るうちに足は軽くなっていき、いつの間にか鳥居まで辿り着いていた。
ーーやべっ。
何かが動いていた。 松明 の明かりが届かない暗闇の所だったが、白い物体が移動しているのははっきりとわかった。
咄嗟 に隠れた柱の影から覗き、目を凝らす。
ーーやっぱ……いるな。
長い白髪が左右に揺れる様は、帰りに見た白鬼そのものでヒナは確信する。
だが、散歩でもしているかの様子に思わず口に出してしまう。
「……踊って、ねーじゃん」
静寂の中で、ヒナの声が響く。
思いの外通ってしまった声は白鬼にも届いていた。
単調な石畳 を叩く音が大きくなるに連れ、ヒナの鼓動は早くなる。焦りで思考が纏まらないーーもう、どうとでもなれ、と半ばやけになり自ら白鬼へと歩み寄っていった。
ともだちにシェアしよう!