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第9話

全く、遠藤さんったら、無茶言うんだから...。 でも、閉所恐怖症や暗所恐怖症の荒療治にもなる、て言われ、映画館デート当日。 もし人身事故の影響で電車が遅延したり、万が一、何らかの状況に巻き込まれて待ち合わせに遅れたりしたらいけない。 待ち合わせている映画館と併設しているショッピングモールの前に、一時間前には到着するように、準備して出掛けた。 電車のポールに掴まり、窓ガラスに映る自分の髪を指先で捻りチェック。 何より、この手のひらだ。 斜め掛けにしたウエストポーチからハンドクリームを取り出し、一旦、手の甲に捻ると念入りに両手に塗り込む。 かれこれ、軽く10回は塗りこんだ。 手汗も怖いけど、 「うっわ、聖也、手、カッサカサ」 とか思われたくないし。 爽やかな微かな金木犀の香り... は、とした。 ...亮、金木犀の香り、嫌いじゃないかな....。 僕は好きだし、期間限定だったし、試しにコンビニで嗅いだらいい香りだと思ったんだけど...。 無香料にすれば良かったかな、それか無難な奴....。 またもや、僕は、は、とし、顔が熱くなる。 ...なんか、これ、僕ってば亮の手を握る前提じゃん。 ...で、出来るのかな、亮の手をに、握る、なんて。 もう一度、塗っておこ。 そうこうしていたら、待ち合わせ近くの駅に着いた。 まだ、亮は来ては居ないはず、と駅の階段を降り、ショッピングモールへと歩く。 今日のコーデは黒のデニムパンツに一部がチェック地になったシャツに薄手の黒とグレーのコート。 人波を縫い歩いていた僕はショッピングモールに近づき、驚愕で目を見開いた。 そこには亮の姿があり、僕を見つけて手を振ったからだ。 僅かに170に届かない僕より背の高い180あり、手脚も長く、凄く目立つ亮。 自慢の彼氏、なんだろうけど、まさか亮に告られるなんて、今でも夢みたい。 しかも、亮はイケメンなのに性格も良くて優しい。 遠藤さんと電話ながら知り合った際、こんなに優しい人がいるんだ、て思った。 亮はまるで遠藤さんと同じくらいに優しいんだ。

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