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第10話
亮の前に着いた僕は亮を見上げた。
「...一時間前なのに」
亮が僕を見つめ微笑んだ。眩しい笑顔...!
「早く聖也の顔を見てー!と思ったら早く着いちゃってさ」
う、嬉しい...!
僕と同じ気持ち!
「は?なにその歯が浮くセリフ」
フン、と鼻を鳴らし、内心の僕は、
僕の馬鹿!僕も同じだよって言えばいいじゃん!馬鹿馬鹿馬鹿ー!
...でも恥ずかしいんだもん、仕方ないじゃん。
色んな僕が大騒ぎしてる。
「じゃ、モールでなんか食べよっか、昼前だし」
「だね」
そうして、亮に次いで歩き出す。
「何が食いたい?聖也」
「えーっ、なんでもいいけど」
...和食。和食が食べたい。
ふと、フードエリアの一軒で亮が足を止めた。
亮の視線を追うと和食のサンプルが並んでる...!
「あー、なんか俺、和食食べたい気分かも。和食でいい?聖也」
「...うん」
ガラス越しのサンプル、天ぷらがある!
昨夜、遠藤さんに漏らしたんだけど。
亮も和食な気分だったなんて...。
生憎、並ばなくてはならず、名前と人数を書いて、並んで座った。
その間もウエストポーチからハンドクリームを取り出し、ぬりぬり。
「へー、ハンドクリーム?」
ギクッ。
「あー、最近、手荒れが気になっててさ」
「ま、秋だしなー。俺にも少し分けて?聖也」
え。
ハンドクリームを渡そうとしたら、多めに塗った僕の手を両手で握られた。
ギャー!
映画館前に握った、握られちゃった!
亮の手のひらに包まれた手を見つめる。
おっきな指の長い亮の手のひら。
....あったかい。
「あ、なに?いい香りすんな、これ」
「...金木犀」
「あー、金木犀か、これ。いい香りだな」
...いい香りだな、て言った!?
聞き間違えじゃないよね!?
真顔ながら、中身は大騒ぎ。
そうして、念願だった天ぷら定食が来るまで、テーブルにはハンドクリームを置き、塗った。
「そんなに手荒れしてんの?聖也」
「気になっちゃうタイプだから僕」
なんてすました顔しちゃうけど。
亮は唐揚げ定食だった。
...揚げ物、苦手だから頑張らなきゃ。
ふと思った自分に、また、内心、キャー!と大騒ぎしながら、亮とたまに会話を挟みながら静かに昼食を摂った。
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