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第13話

亮side. 「じゃ、またな」 電車で先に俺はバイト先近くで降りた。 聖也の姿が見えなくなるまでホームで手を振った。 聖也も小さく電車の中で手を振ってくれた。 相変わらず、笑顔なんかないけど、それはそれでいい。 中身は多分、俺との暫しのお別れで半泣きかもだし。 にしても。 前日、イキリうさぎの聖也と、遠藤として相談に乗っていた際に、 「僕、早めに待ち合わせに行こうと思うんです!」 の宣言に、呆気にとられた。 一時間前に行くか、それとも三時間前に行くか悩むと言うので、俺は慌てて、 「いや、一時間前でいいでしょう。昼だから陽射しはあるとはいえ秋ですし、風邪引きますよ」 「....そうでしょうか。早く会いたいのにな」 ボソッと聖也が独り言を呟き、可愛ええ...、と口にしてしまいそうになった。 聖也が来る前に待っておこう、と決めていた俺は一時間より少し前に待ち合わせ場所にいたんだ。 まあ、相変わらず天ノ弱な聖也はツン!だったけど、微かに耳を赤らめていたのを見逃さなかった。 「映画ですかー、芸術の秋ですね」 羨ましい、と続いて、食欲の秋でもありますね、と話しを変えた。 「ですね、最近、食欲増した気します。でも、天ぷらがなかなか食べれないんですよね、学食にもないし。大学近くのお蕎麦屋さんにあるかなあ」 そうして、さりげなく聖也が食べたい物もリサーチし、上映前、サンプルが並ぶフードコートで和食の店で足を止めたんだ。 並んで座り、呼ばれるのを待っていたら、聖也はバッグからハンドクリームを取り出し、塗り始めた。 「怖かったら彼氏さんの腕か手を握ってみましょう」 作戦を話した俺の言葉を意識してんのかな、と思わず可愛くなり、ハンドクリームを貸して貰うフリをして、聖也の手にハンドクリームを塗り、握った。 繋がれた手から目が離せなくなった様子で真顔なのに、顔ははっきり真っ赤にした聖也、可愛すぎたなー。 食事の最中もさりげなく、テーブルにハンドクリームを置いていた辺り、もしや、聖也は再度、俺から手を握られるのを期待してたのかな? 聖也のみぞ知る。

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