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第14話

帰宅した僕は頑張っておめかしした窮屈な服からダボッとした部屋着に着替え、コンタクトを外し、眼鏡を掛けた。 「あー、落ち着くー!」 うんと背伸びした後はテーブルに置いた亮が買ってくれたパンフを正座をし、そっと手に取った。 「一生物の宝物だ....」 胸に抱き、思わず顔がだらしなく綻んじゃう僕。 誰も見てはいないし気が抜けて素の自分を晒せちゃう。 「あ、そうだ」 パンフのお金を亮に渡していない事に今更、気がついた。 「...バイト中だろうけど...」 亮はイベント会社でバイトしてるらしい。 僕もバイトしたいな、とは思うけど、実は人見知りだし、それに、亮に誘われた時にいつでも会える状況でいたくって...。 スマホを手に取った。 「んーと...。パンフのお金、払うの忘れてた。明日は大学?」 しばらく待ったが、既読にはならない。 「....バイトなんだし、当たり前か....」 それでも、既読が付くか気にしてしまう自分がいる。 簡単な夕飯を作って食べ、お風呂に入って、基礎化粧品で肌を整えパック中でも、つい、亮に送ったメッセージを読み返してる。 「...明日、大学なら渡すから」 声にしながら文字に起こし、けれど、送信はせずに消した。 はあ、とため息が漏れる。 「一緒にDVD鑑賞...めっちゃリア充だよね...」 それなのに気が重い。 正直、あまり長い時間、一緒にいたら本当は根暗な僕が出ちゃうんじゃ、引かれちゃうんじゃ、て怖いんだ。 僕は自然となんでも相談室に電話していた。 三回の呼び出しの後、 「はい、もしもーし!誰でもなんでも相談室でーす!初めてのお方ですかー!?」 朗らかな女性の声に迎えられる。 「あ、あの、イキリうさぎです....」 「イキリうさぎさんですね、少々お待ちくださいー」 そして、ヒーリングミュージックに切り替わる。涙を誘うようなこの音に弱い。 「すみません、お待たせしました。遠藤さん、今、別の方の相談中でして...」 「あ、そうなんですね....」 そうだよね...僕だけの担当な訳ないよね...考えてみたら。 あんなに優しいし的確なアドバイス出来る人だもん....。 「また後ほど、お掛け直して頂けますか?本当にすみません、イキリうさぎさん」 「はい、わかりました...」 静かにスマホを閉じた。 亮だけでなく、遠藤さんとも連絡がつかないなんて...。 再び、ため息が漏れた。

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