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避け始めた末

遠藤さんへの気持ちに気づいた僕は翌日から亮を避け始めた。 話しかけて来ようとする亮を背に走って逃げる。 遠藤さんへの相談電話も掛けていない。 亮とも遠藤さんとも話せず寂しいけど、亮に会わせる顔は無いし、かといって亮を無視しているのに遠藤さんに甘えたくは無い。 亮と遠藤さんを天秤に掛けている気分だ。 三日を経つ頃には肌の手入れも怠り、コンタクトを入れるのも面倒な僕は瓶底メガネで大学に行った。 亮からの心配するメールや電話も来るけど、電話は遂にはマナーモードにし、メールは肩を竦め眺めるだけでスマホを閉じる。 その日は亮は講義がなかったのか出くわす事がなく安堵した。 校舎裏にあるベンチで身を隠すように膝を抱えて俯いて座っていた。 「あれ?聖也、どうした?」 思わず顔を上げるとそこにいたのは僕の唯一無二の友人、高橋友和だった。 びっくり眼で友和を見つめる。 「なにかあった?」 そんな僕を気にせず、友和が隣に座った。 「....どうして」 「ん?」 亮より僅かに低いくらいだろう、長身で細身、なかなかなイケメンの友和は躊躇なく僕を見つめ返す。 「どうして僕だって気づいたの....?」 一瞬の間の後、友和は軽快に笑った。 「どうして、て言われても困るけど...やっぱ覚えてないか、聖也は俺のこと」 ?と首を傾げると友和はデニムのポケットからスマホを取り出し、なにやら操作を始めた。 「ん」 唐突にスマホを見せつけられ、僕は再び目を丸くした。 スマホの写メには、僕と同じ中学の制服の生徒がいる。何より、見覚えのある凄く太った生徒、丸い顔には愛機のある屈託のない笑顔が浮かんでいる。 僕が掃除用具入れに閉じ込められた際に開けてくれ、助けてくれた生徒だ。 「....知り合い?」 「ううん、俺」 「えっ」 僕はスマホの写メと友和を何往復も見比べてしまった。 「....友和が、あの時の...え?」 「実家は母親が食べるのが大好きでさ、食事の量が半端ないの。しかも美味いから他の家族までデブなんよ。父さんも姉貴も弟も」 「頑張ってダイエットしたんだね...」 ううん、と友和が首を振る。 「高校で俺、寮だったから、食事の量が減って勝手に痩せただけ」 「....そうなんだ...でも、凄い、別人だね....て、ご、ごめん」 謝らなくていいよ、と友和が軽快に笑った。 「....ごめん、僕....ずっと嘘ついてた。モテてただとか、全部、嘘、なんだ...。見栄張ってただけで....」 「なーん。気にしてないって、そんな器小さくないし、それくらいで怒りもしないよー。でも、綺麗になったなあ、て思ってた。努力したんやなー」 明るくそう言ってくれた。 僕は...瓶底メガネ越しに涙が止まらなかった。 「泣かせた?ごめん」 「....違う、嬉しくて....」 ポンポンと涙を流す僕の肩を友和は優しく叩いてくれた。

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