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第62話 溺愛
萎えたら、怒る。
そう震えちゃいそうな声で言ったら笑ってた。笑って、言葉よりもキスをくれた。深くて、濃くて、蕩けそうなの。
「や、ぁ……ン、ぁっ、あっ」
乳首を吸われて、旭輝の唇に硬さを確かめるように食まれて、背中がくねる。まるで、彼の舌に押し付けて、もっと舐めてって、その舌先に撫で付けてるみたいに。背中を反らせながら、愛撫に甘い声が溢れ落ちてく。
口の中で弾かれるように可愛がられるとたまらなくて、小刻みに、嬉しそうな声をあげてしまう。
「ン、あぁっ」
そして、敏感になった乳首を濡らされて。
それだけでトロトロになってる自分が恥ずかしくて、飛び跳ねてうるさく騒いでる心臓ごと鷲掴みにするように、捲り上げられた服をぎゅっと握った。
「怖い?」
「! こ、怖くないしっ」
「そ?」
そうです!
そんなふうに答える可愛くない口にまた、今度は触れるだけのキスをした。そして力いっぱいぎゅっと服を握りしめてる俺の手にわずかに笑って、この手の甲にキスをする。それから、もう一度、胸に。乳首に唇が触れると小さく声が溢れて。けれど今度はそのキスが乳首から、全身、脇腹、腰骨――って、移動していく。
全身、可愛がるようにキスをくれる。
ね、骨っぽいでしょ?
胸なんて女の人みたいに膨らんでるわけでもない。柔らかくもない。面白くなんてない、でしょ?
男だもん。
でも、お願い。
「聡衣」
萎えないでよ。
そんな不安を知ってるみたいに、旭輝が唇を重ねて、肌を指で、手のひらで撫でてくれる。
「……ぁ」
身体が重なると押し付けられた熱の硬さを感じた。
「ン」
硬くて、熱い。
「あっ……」
旭輝の。
すごい、硬い。
「旭輝」
ちゃんと、興奮してくれてる。
嬉しくて、思わずこっちからもキスをした。そっと下から覗き込むように、唇をくっつけて。続けて、もう一度キスをして、もっとしっかり見つめてから、今度はしっとりと唇を重ねて。
舌先を絡めながら、萎えないでいてくれたそこをそっと撫でた。
「っ」
息をつめたのは旭輝のほう。
触り方、違う? 女の人とじゃ。愛撫の仕方も違ってたりする?
違う?
「聡衣」
「ん……」
硬いままでいてくれるのが嬉しくて襲い掛かったのは俺のほう。
「あ……む」
「っ」
興奮してくれてる。硬くて、熱くて。それが嬉しい。
その硬いままだった旭輝のを丁寧に舌で愛撫して、口の中でちゃんと扱いて。
全部なんて到底咥られないくらいにちゃんと硬くて熱くて太いそれを手で握りながら頬張って。
見つめる旭輝の視線が熱くて、溶けちゃいそうだった。そんなに見つめられたら、上手にできなくなっちゃいそうなくらい。熱く見つめられて。
身体の奥がチリチリしてくる。奥のとこ、俺の好きな。
「あっ……ン」
身体の奥のやらしいとこ。
「聡衣……」
「ぁ」
「そこにローション、ある、の」
そのやらしいとこが、欲しいって疼いてる。ずっとずっと、ベッドでキスした時からずっと、本当はね、疼いてて仕方なかった。
「これ使って」
旭輝のこと、欲しくて。
「ここ、こういうの使わないと、その、できない……からっ」
つまりはこういうことなわけ。女の人とだったらこんなのいらないでしょ? そんで、もっとロマンチックにキスして触れて、そしたらもう、ね。けど、男同士ってこういうことなわけで。
「あぁ」
旭輝は頷いて、耳に、うなじに、首筋にキスをくれる。キスをしながら、俺が持っていたローションを手に取った。
「ここ、は……それで、中、ほぐして、柔らかく、しないと、旭輝の、入らない」
「あぁ」
「! ちょ、何でそこでちょっと笑う?」
「わり」
だってだって仕方ないじゃん。そりゃムードなんてないけどさ。ロマンチックのかけらもないかもしれないけどさ。けど、男同士でセックスするのってそういうものなの。だから萎えないでねって言ったじゃん。そう文句を言おうと思ったのに、噛みついちゃおうかと思ったのに、押し倒されて、できなかった。
「聡衣ってさ、身体は敏感なくせに」
「っ、ン」
うなじにキスをされて、小さく声が溢れた。
「こっちは鈍感だな」
今度はおでこ、全開にされて、そこにキスをされた。頭のとこ。
ちょっと、おでこ、全部出されるの恥ずかしいんだけどって慌て手。長めの、普段は横に流してる前髪で額を隠すと、それにも笑ってる。全裸で、おでこ全開に恥ずかしがってるのなんて確かに変だけどさ。
「ずっと……こっちはすげぇアピールしてんのに全然気が付かないで、そのくせ、無自覚にずっと煽ってくるから、大変なんだけどって思ってたんだ」
「は、はい?」
無自覚に? 俺が? 煽ったの? いつ? 今?
「今もそうだ。俺のが入らないとかさ」
今の? 旭輝の入らないよって、言ったこと? だって、本当だし。
「言う時の仕草も、声も、表情も」
仕草? 変じゃない? 声だってうわずってない? 顔なんてもう真っ赤でしょ?
きっと真っ赤だよ。
頭パンクしそうなんだってば。
萎えたらって不安なのに。早く欲しくて仕方ない。
慌てちゃう。
だって好きになっちゃった。ノンケは範囲外。恋愛対象外のはずなのにそれでも好き。そのくらい好きなの。だからね、ずっと、ずっと、ベッドでキスした時からずっと、旭輝のことが欲しくて。
「そんで、その聡衣の全部が、可愛くて、たまらないってなっただけ」
たまらないってなってたんだもん。
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