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第73話 優しいセックス
やっぱりスープ、あそこの、すっごい美味しかった。
熱いけど。
猫舌の俺にはちょっと食べ始めるのが苦労するくらいに熱くて大変なんだけど。
「あっ……ン」
でも、今日は、それだけじゃなく、喉のところが熱くて。
「あ、待っ……まだ、ここ」
食べるの遅くなっちゃった。
だって、ドキドキしてたんだもん。
襲い掛かる、とか旭輝が言うから、すっごい意識しちゃって。
なのに言った本人は、旭輝はそんなことにドキドキしてる俺の隣で美味しそうにスープとパン食べてた。すぐに食べ終わっちゃって、外向きに設置されたカウンターのとこ、駅へと向かう人、駅から出てくる人、その様子をちっとも眺めることなく、隣に座る俺をじっと見つめて。
すっごい食べにくくてさ。
面白い? 俺なんか眺めてて。そう尋ねたら、頬杖をつきながら「面白いよ」なんて言って笑ってた。
その笑顔にすらとてもドキドキしてた。
「ね、ここ、まだ廊下、だよ」
スープ、喉通らなくて、大変だったんだから。
「あぁ、そうだな」
「あン」
首筋を優しく吸われて、旭輝の黒いコートにしがみついた。
「やぁ……ン、そ、れに、シャワー、浴びないと」
また、キスマーク付いた。
今、キスしたとこ。
「あっ、ン、俺、今日一日仕事だった、から、シャワー」
そして、コートを着たまま、まだリビングにも到着していないのに、旭輝の手は俺の着ていたニットの下へと潜り込んで、その指に薄っぺらくて、女の人みたいな柔らかさもないお腹を撫でられて。
「ン」
期待、しちゃう。
「聡衣」
「あっ」
期待、してた。
「ぁ……旭輝、ンッ……ぁっ」
後で、彼に、襲い掛かられるんだって、すごく、身体が熱くなって。
「やぁ……ン」
乳首、抓られただけでこんな甘い声が溢れるくらい、期待していた。
「身体、きつくなかったか? 立ち仕事だろ?」
「ン……平気、あ、ダメっ」
「ダメだった?」
「ン、仕事は、ダメ、じゃなくて、それっ、やぁっ」
「これ?」
「あっ」
中を指が丁寧に愛撫してくれる。その度にとろけた声がバスルームの中に響いて、自分のそんな声の甘ったるさが恥ずかしくて仕方ない。
俺は掴みようのないタイルにしがみつきながら、腰をくねらせて、セックスの準備をしてくれる指に身悶えてる。
「ン、あっ」
指に前立腺を優しく撫でられて、その心地良さに震えると、旭輝に肩を甘やかに噛まれて。
「聡衣」
「ぁ……だめ」
奥のとこ、お腹の、奥の。
「あ、あ、あ」
「聡衣」
「ン……んっ……ぁ……ン」
奥が、旭輝のことが欲しいって、熱くて、ぎゅって、切なくて。
「ン……旭輝っ」
後ろから覆い被さるように抱き締めてくれた旭輝の手が、タイルに縋る俺の手に重なって、長い指が絡まって。
「ンっ……も」
タイルと旭輝に挟まれるように、その身体を押し付けられると腰の辺りに触れる、それが熱くて、硬くて。
「平気、だよ」
身体が旭輝のを欲しいって疼くから、長い指をぎゅって握りながら。
「も、柔らかい、よ」
キスをして、背後にいる彼の舌にしゃぶりついた。
「あ、あ、あ」
ベッドが軋む音と自分の甘い声。
「あぁっ……ン」
掠れてる。
「あ、ンっ」
後ろから腰を掴まれて、何度も奥を突かれてる。
「あ、あ、あ」
「聡衣」
振り返ると、旭輝がじっと俺を見つめてた。その視線がすごく熱っぽくて。
「っ」
繋がった場所をキュッと締め付けると、眉をひそめてくれた。
「聡衣」
「あっ……ン」
抜けちゃったって、恥ずかしいくらいに切なげな声が勝手に口から溢れて、それを慌てて止めるように手の甲で口元を押さえつけてると、そのまま身体の向きを変えて、前から。
「ン、んんんんんっ」
熱くて硬いのがまた入ってきた。
奥までいっぱいに抉じ開けられたら、たまらなくて。
「あ、や、待って、触っちゃ」
「聡衣」
繋がった奥を突き上げられながら、旭輝の大きな手に前をキュッと握られると、恥ずかしさと快楽とで目の奥でチカチカって光が走る。
「や、だめっ」
「っ」
腰を鷲掴みにされて、そのまま逃げられないようにってされながら、何度も何度も追い立てられてく。
「あ、待っ」
「聡衣」
「ン、んんん」
旭輝の低い声がセックスの時はもっと低く掠れるのが、ゾクゾクした。
「あ、あ、あ」
その声、すごく好き。
「やぁっ」
「っ」
孔をキュッと締めると顔をしかめてくれるの、好き。色っぽくて。
「あっ、ン」
それに、俺に感じてくれてるんだって、わかるから。
「あ、あ、あ」
好き。
「聡衣」
「やぁっ……あ、ぁ」
背中を丸めて、旭輝の唇が乳首を咥えてくれると、奥が悦んじゃうの。
「あ、だ、め……あ、ン」
ほら。
もう、イっちゃう。
「旭輝っ」
「あぁ」
旭輝もちゃんと気持ちい?
「あ、待って、イクっ、イっちゃう」
「っ」
俺の身体、気持ちぃ?
「あ、あ、あ、ダメ、ダメっ」
「聡衣」
見つめられながら、奥めがけて何度も貫かれた。
その瞳に俺しか写ってないのが嬉しくて。
旭輝のが硬くて、熱くて、気持ち良くて。
「あっ……」
「っ」
「あ、あ、あ、あ」
もう何も考えられなくなるくらい、旭輝のことで身体も胸のところも、頭の中もいっぱいになった時。
「聡衣」
そう俺のことを呼んでくれるその声がすごく切なげで。
「あっ…………っっ、ン」
彼に必死にしがみつきながら、全身で抱きつきながら、二人で一緒に達してた。達しながら差し込まれた舌にしゃぶりついて。
「旭輝……」
優しい彼氏の名前をそっと耳元で囁いた。
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