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第77話 ぃぃ、よ
ねぇ、思うままに欲しがっても。
「……旭輝」
いいの?
「あぁ、湯冷めしないように、すぐに上がるから」
「あ、ううん」
思うまま、旭輝のこと、欲しがっても……いい?
「へ……き」
先にシャワーを終えた俺を見て、眺めていただけっぽかった映画を消すと、旭輝が次にってバスルームへ向かおうとした。けど、その腕を掴んで、引き留めた。引き留められたことに、少しだけ旭輝が目を丸くしてる。その瞳を覗き込んで、小さく、彼にだけ聞こえるように名前を呼んだ。
「旭輝は、そのまま、で」
ドキドキしてる。
あと、ゾクゾクしてる。
「……聡衣」
セックスの前はシャワー浴びたい。だってその方が肌とかいい感じになるし、もちろん男だから準備もあるしさ、だから、シャワー浴びたいんだよね。セックスするのに気持ちいい、なんていうか、美味しそうな肌に、身体になりたいから。
「このまま、しよ」
今日、河野と楽しそうに話す旭輝をたくさん見てた。俺の話もしてくれたの、嬉しかった。
河野が教えてくれた色んな話。
俺の知らない旭輝のことを知れたの楽しかったよ。タイピン、職場で見せびらかしてくれてたってこと、この前、俺が国見さんとデートをしてて、留守電を聞いた旭輝が血相を変えて職場を飛び出したこと。すごかったんだって言ってた
廊下ですれ違った時、あんな必死でコートも着ないで慌ててるところが見られたのは貴重だったって、性格の悪い河野が嬉しそうにしてたくらい。
「旭輝はシャワー、いい、から」
それからね。あれも嬉しかった。
全然違うんだって、河野が教えてくれたの。
表情がね、違うんだって。
旭輝が女性に話しかけられた時の表情と、俺と一緒にいる時の顔。最初にそれを見かけて驚いたのは、職場近くのカフェ。ランチ一緒に食べようって旭輝が誘ってくれた時だったって。俺はベーグルサンドを頼んで、そしたらもっと食べろって言われたあの時。外出から戻ってきたところだった河野がその様子を見かけて、目玉、飛び出ちゃうくらいに驚いたんだって。
こっちは昼休憩も取らずに外出から戻ってきたのに、嬉しそうに、本当に嬉しそうにしてたって。あの時、日差しがいっぱい入る温かい日向の窓際の席だったから。確かに外から丸見えだったもんね。
そんなに嬉しそうにしてくれたの、嬉しかった。
すごく嬉しくて。
「も、ぅ……したい」
触れたくてたまらなくなった。
だから引き寄せるように手を繋いだら、そのまま抱き抱えて、首筋にキスをくれた。
「あっ……ンっ」
旭輝のこと独り占めしてしまいたくて、たまらなくなったの。
「聡衣」
欲しくて、たまらないって、なったよ。
「ン」
俺の名前を呼んで、壁に押し付けるように身体を密着させられた。
「あっ」
旭輝の、ちゃんと――。
「セーブしてたのに……煽ったのは」
ちゃんと、硬い。
「聡衣、だからな」
硬くて、熱くて、ドキドキする。
「う……ん。そう、だよ」
ホッとしたんじゃなくてね。
「旭輝のこと、煽った、よ?」
ドキドキした。
興奮、したの。
だから、その大きな手を掴んで。
「もっと、触って」
その掌に丁寧に、その興奮を煽るように、君に触れたいんだって伝わるように、キスをした。
「甘い匂い」
「あ……苦手?」
「いや……うまそうだなって」
そう言いながらベッドに俺を押し倒して、そのままうなじの辺りにキスマークを続けてつけていく。
「あっ……ン」
「いつも思ってた」
「あ……や……声。腰に来る、のに」
耳元で低く囁かれて、腰の辺りがビリビリと痺れるくらいに感じてる。
「俺の声?」
「そう……ン、低くて、ゾクゾクする」
枕をぎゅっと抱き締めながら、うなじに施されていく赤い印に何度も甘い声が溢れ落ちてく。
「へぇ」
「や、ぁっ」
背中に旭輝の身体が重なるように覆い被さって、耳に唇が触れたまま、低く、殊更低い声で呟かれて、腰が勝手に浮き上がる。耳の付け根なんてところに、ちゅうって音を立てて吸われるとたまらなくて、枕をぎゅっと握りながら、愛撫に溢れる声を枕に押し付けて。
「前に言ったろ? 声、聞きたい」
「あ、あ、あ……ン」
低い声で話しかけられるのも愛撫に代わる。
「声、出して」
「あぁ……ン」
そして、枕をぎゅっと握り締めていた手に手が重なって、指を絡め取られてそのまま、仰向けにひっくり返された。
「ン」
口元を抑えていた枕を手放して、今度はまだ着ているスウエットの袖で口元を隠しながら、じっと見上げると。
ドキドキするくらい、見つめられてた。その瞳が濡れていて、旭輝が興奮してくれてるのがわかる。
「ん……」
その目に見せつけるように自分から服を捲り上げる。そっと口元を片手で隠しながら、指先で裾のところを握って。
「ふぅ……ン」
見られてる。ただそれだけでも気持ち、ぃ。
「考えないようにしてた」
「ぇ? ……あっ! ……ンっ」
「けど、やっぱムカつくな」
「あ、あっ」
言いながら、旭輝の大きな手が下腹部を撫でて、それから脇腹をその細さを確かめるように掴んで、そのまま、指先が。
「やぁあっ」
「この聡衣を見たことある奴がいること」
「あっン」
キュッと片手で乳首を摘まれて、切ない声が溢れる。そのまま硬くなった乳首をこねるように指先で可愛がられて、気持ち良くて、感じすぎて戸惑うくらい。
「あ、あ、あ」
「だからできるだけ上品に抱いてた」
「あ……ン」
「ボロが出そうだし。他の男の方がずっと上手に聡衣を気持ち良くさせられてたら、嫌だし」
「ああ、あ、あ、乳首っ」
「夢中になるのはわかってたから、できるだけ、抑えて」
「あ、あ」
キス、したい。
「一番、だよ」
「? 聡衣?」
「一番、気持ちぃ、よ」
「……」
ねぇ、キス、欲しい。
「セックスって、こんなに気持ちいいっけ? って……っ、ン、びっくりしたくらい」
全身に、旭輝の唇で可愛がられたくて、ずっと口元を抑えていた手で。
「全部、気持ちぃ……」
大好きな人にしがみついて、上品からは程遠いキスをした。
「……ん、きもち……ぃ……の」
はしたなくて、やらしく、舌にしゃぶりつく、キスをした。
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