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第88話 溺愛されたいタイプです。
こういうの欲しがるタイプじゃなかったんだけどな。
「や、ぁ……あ、あ、あ」
手を繋ぐととか、会話するみたいに交わすキスとか、肩を引き寄せられたりとか。甘いの。そういうの、欲しがるタイプじゃなかったの。
可愛げは……あんまないかもしれないけど。
でも、自分は自分っていうかさ。
けど、旭輝のくれる溺愛は柔らかくて、心地よくて、気持ち良くて。
「やぁ……ン、あ……ん、ふ」
とろけるくらいに甘くて。
「あっ」
「聡衣、入れるぞ」
「あ、うん……」
美味しい。
「聡衣」
「あぁっ」
たまらなく美味しいから、また、欲しくなる。
「あっ……ン」
優しい声も、逃がさないってしっかり食い込む指先も好き。全身に付けられるキスマークも、耳元で聞こえる乱れた呼吸も。
全部気持ち良くて。
キスに濡れた唇をキュッと結んで、溺愛されたいって指先が旭輝のまだ脱ぎかけの服を掴んで離さない。ベッドの上で身悶えながらその背中に腕を回した。
ただそこに旭輝の先端が押し付けられただけで、こんなにお腹のそこのところまできゅぅって疼くの。
皆で鍋囲んで、ゲームしてはしゃいで、楽しくて賑やかだった部屋の中が甘い音で満ちてく。
「……聡衣」
「あぁっ……ン」
身体が。
「っ、聡衣」
「あっ」
旭輝のこと離さないって、しがみつく。
恥ずかしいくらいに身体の奥まで切なくなってる。
「あっ……あぁ……奥っ」
「っ」
クンって腰を押し付けられて甘ったるい声が零れ落ちた。そして、その声をもっとってねだるみたいに中を擦られながら、肌にキスをたくさんされて。
「あぁっ」
乳首に歯を立てられるの、すごく弱くて、その瞬間、旭輝のをキュッて締め付けちゃう。でもそれを掻き分けるようにまた太くて硬いので奥まで、全部。
「聡衣」
「あ、あっ、そこっ」
「ここ?」
「あぁっ……ンっ」
全部、旭輝でいっぱいになるのがたまらなく気持ちい。
「ぅ、ん、そこ、好き」
たまらなく好き。
「だから、ここ」
腕を伸ばして、せがむように首を傾げる。
キスをもらえると中が絡みついて、旭輝にしゃぶりつく。舌でも絡まり合って足で旭輝のことを捕まえて。
「もっと、して」
もっと旭輝のことが欲しいって、身体で声で、指先で、視線で、全部で擦り寄ったりするくらい。彼に溺愛されたい。
全然違ってたんだから。元々は全然そういうんじゃなかったんだから。知ってるでしょ? トイレで痴話喧嘩してた時の俺。可愛げゼロだったでしょ?
だからこれは本当に旭輝だからなだけで。
そもそもはこういうタイプじゃなかったんだからね。
違ってたんだから。
「あのね……」
「?」
はっず。
「俺ね」
でも、言いたい。
だから、できるだけ近くに引き寄せて、誰もここにはいないけれど、誰にも聞かれないように彼の耳元でだけそっと呟く。
「溺愛」
そっと、内緒で。
「……されたいタイプ、だよ」
そう小さく耳元で言ってから、それでもやっぱり恥ずかしくてその腕の中に隠れたくて。
「……ん、ふ……ん、ク」
でも、やっぱり隠してもらえない。
顔なんて今見られたくないのに。絶対に真っ赤じゃん。絶対にすごい真っ赤でしょ?
「聡衣」
「あっ……」
「あんまり可愛いこと言うなよ」
「あ、あ」
「明日、寝正月になるぞ」
そう言って笑って、背中を丸めた彼が胸に赤い印をつけてくれるだけで、ほら、また中が可愛がられたいって、溺愛してよって、隙間なく絡みついて、締め付けた。
「楽しかったね」
二人でベッドに沈みながら、今日の騒がしい夕食のことを思い出してた。変な組み合わせだよね。友達じゃないけど、楽しくて仕方なかった。
「あぁ」
「今度はあんこう鍋って言ってたね。河野、酔っ払ってたけど。覚えてるかなぁ」
「どうだろうな」
「ライフゲームもさ、二人でやるのも楽しいけど、四人でやるのすごい楽しかった。あ、そうだ。さっき。国見さんから明けましておめでとうってメッセージ来てた。時差があるから向こうの方が遅かったみたいでさ。そうだ! 今度は国見さんも誘って、大勢でさ。またやりたいかも」
「聡衣」
「?」
「……」
どうかした?
電気を消して、二人で抱き合うように横になってた。もう真っ暗だから顔は見えないけれど、そっと布団から出た手が髪を撫でてくれる。少しクセのある髪に指を絡めて、それから、柔らかさと感触を確かめるように優しく撫でて。
「…………そうだな」
顔は見えないけど。声は穏やかで優しい。
「楽しかった」
指先も優しくて。
「うん」
頷くと、そっと引き寄せられて、そのまま額にキスをくれた。
優しいキスと優しい腕の中、それから旭輝の体温。
甘くて心地いいここにいると、とろけて溶けちゃいそうで。
お参りして、驚くくらいの人の中であの二人に遭遇して、お鍋食べてゲームして、酔っ払いな河野に笑って。一日けっこう盛りだくさんだったから、かな。
「ぅ……ん」
こうしていたら急に眠くなってきて。
「聡衣」
「……ん、また」
クセになるこの甘い腕の中、沈むようにいつの間にか眠ってた。また皆で……そう言い切る前に、髪に触れる旭輝の指先に誘われるように眠っていた。
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