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第108話 しよ。
中学生の頃、毎週ドキドキしながら、うっとりしながら見つめていたラブストーリー。翌日はもうみんなその話題ばっかりだったっけ。
あんなイケメンに愛されるとか溶けちゃうよね。
あんな告白されたらやばいよね。
あんなふうに大事にされたらすごいよね。
最高、だよね。
「……ン」
溶けちゃうし。
「聡衣」
「ン」
やばいし。
すごいし。
「聡衣」
最高。
ベッドの上に移動して、乾かしてもらったばかりの柔らかい髪をその長い指が何度もすいてくれる。それから頬を撫でて、親指が唇をなぞってから、またそっとキスで触れる。
「……あ」
「聡衣?」
「キス」
そうだ。それも、不安の一つになった。
「最近、しなかった」
「……」
「セックスも」
いつもならキスするタイミングなのに笑ってただけだったし、夜も、忙しいのかなって思うようにしてたけど、その……してなかった。
「それも、けっこう不安だった」
「……」
「だから……って、なんでそこで旭輝が赤面?」
「……いや」
口元を手のひらで覆いながら、視線を逸らして、なんか困った顔してる。
「旭輝?」
名前を呼んで、その逸された視線を追いかけるように首を傾げると、すごく小さな声が教えてくれた。旭輝らしくないボソボソって聞き取りにくい声が、遠距離になったらそうは触れなくなるから、今のうちから少し慣れておかないとって。
だから触るの、控えてたって。
何それ。
「触りたくてカラッカラに乾いて干からびそうだったけどな」
何、それ。
「…………っぷ」
「…………笑うな」
「だって」
笑っちゃうに決まってる。
そっと、まだ珍しく真っ赤な旭輝に首に腕を絡めて、引き寄せながら、キスをした。そっと、触れて、その唇を啄んで、少しだけ離して。
「旭輝が困った顔してる」
そこで、からかうと、キスで柔らかくほぐれた唇をキュッと結んでへの字に曲げた。
「仕方ないだろ。こっちはほぼ初恋なんだから」
への字にしながら、切なくなるくらいのことを呟いてるし。
「俺も……」
「聡衣?」
「こんなに好きになったの初めて」
「……」
「知ってるでしょ? 俺が二股かけられて、トイレで痴話喧嘩して、グーで殴ったの」
妊婦さんってこともあったけどさ、もう二股、しかも女の人と、なんてなったらもうそこで終わってた。性別違うじゃん? もうそんなの無理ってことでしょ? それでも、諦めたくないなんてしがみついたりなんてしない。惨めじゃん。
「二股なんてかけられたら即別れてた」
「……」
「初めてだよ。もしかしてそうかもって思って、でも追いかけたのも。女の人から奪おうなんて思ったのも」
奪えないものを必死になって追いかけるなんてしなかった。じゃあもう仕方ない、で終わりにしてた。
「初めて…………っ、ン」
旭輝が背中に手を回して、引き寄せると、深く唇を重ねる。口の中を弄られて、舌先を絡め合う、深くて濃いキス。
「ン」
からっからに干からびそうだったのを潤すみたいなキス。
「聡衣」
「よかった」
そこで首を傾げる仕草にすらキュンってするの。
ねぇ、あのさ。
「セックス、する?」
「当たり前だろ」
すごい好き。
「……ぁっ」
背中に回された手がするりと上手に服の中に忍び込んで。背中を大きな手で撫でてから、脇腹に触れて、それから……。
「ぁっ……ン」
「遠距離になったらしょっちゅう触れないからって、我慢する練習してたくらいだぞ? こっちは」
「あン」
できるだけ甘く蕩けた声で、耳元で啼いて。
「あ……っ」
指先に摘まれただけですごくすごく気持ちいいって、もっとしてって、伝わるように耳にキスをした。
「聡衣」
「ぁ……もっと、乳首、して?」
首筋にキスマークがつくだけで震えるくらいに気持ち良かった。だからもっとしてって甘い甘い声でおねだりする。
「はぁっ……ン、ン……んんっ」
「聡衣」
「ね、俺も」
あ、ちょっと、なんかドキドキする。旭輝の手が今度はルームパンツと下着の中の潜り込んだから。
「旭輝に触れないのはちょっと干からびる」
「ちょっとか。俺はかなり」
「えー? じゃあ、俺もすごく」
「俺の方が」
何それ、そんなところで張り合わないでよ。どっちが干からびるでしょうなんて。
「っぷ、じゃあ、無理じゃん」
「……」
「ね……あのね……わかんないけど」
「……」
俺の仕事のこと大事にしてくれてありがとう。
お店で働く俺を見に来てくれてたっけ。アパレル店員っていう仕事が好きな俺のことをすごく尊重してもらえて、すっごく嬉しかった。
「ついてく」
「……」
「一緒にいたい、だから」
ついてくって、そっと耳元で囁くように告白して、腰を浮かせた。脱がせてくれる旭輝の手伝いをして。
「あ……」
「聡衣」
「早く……俺、干からびちゃうってば」
触って。
「俺の方が干からびるとこだった」
「だから、俺だってば」
「いや、俺のほうが」
「……ぁ、はぁっ、あ、あ」
「干からびる」
手で口で旭輝のをたくさん気持ち良くしてあげたい。
俺のも、ねぇ、たくさん触って欲しい。
「あ、あ、あ……」
でも、今はとにかく。
「聡衣」
「あ、指っ……ン、んん」
早く、奥で。
「あ、そこっ……好き」
旭輝とセックスしてるって感じたくてたまらないから。
「やぁっ……あ、あ」
できるだけ甘い声で啼きながら、その指に身体の奥まで柔らかくしてもらえるようにって、つま先まで快感に浸った。
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