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第3話

夕飯後に陽平くんにコーヒーを煎れ、理一は陽平くんのリュックから取り出されたマイボトルでりんごジュース、俺もコーヒー。 「本当にすみません、でも、ありがとうございました。とても美味しかったです」 陽平くんが頭を下げた。 「うん!パパのオムライス、いっつも破けてるし、たまに焦げてるもんね!」 自慢げに理一が声を上げると、 「こら!余計な事は言わなくていい」 真っ赤になった陽平くんが軽く理一の頭を叩く。 「えー!ホントのこと、言っただけなのに!」 小さな両手で頭を抑え、理一が口を尖らせた。 「あー、あまり料理、お得意じゃないんですか?」 「ですね...努力はしているんですけど、なかなか」 「離婚された、て言っていましたもんね、お仕事しながらとなると大変でしょう。ちなみにお仕事は?僕はしがないサラリーマンです」 陽平くんがニコッと微笑む。 「僕も離婚するまではサラリーマンだったんです。ですが、子供が熱を出したり、そんな時にサラリーマンだとなかなか...事情をご存知の店長がいらっしゃるレストランで勤務してます。たまにですが、理一におかずを頂いて帰る事もあったりして」 そうこうしているうちに、電車の時間があるから、と陽平くんが席を立った。 「あ、そうだ。今度、良かったらお礼させてください」 「いえ、そんなお礼される程の事でも」 と恐縮したが、陽平くんと連絡交換し、 「さ、帰るよ、理一」 「えー、やだー!帰りたくないー!」 理一が駄々を捏ねだした。 「いつまでもお邪魔する訳にもいかないだろ、それにパパ、明日も仕事だし、理一だって保育園があるじゃないか」 陽平くんが言い聞かせるが、いやだ!と強情に譲らない。 「今度、来た時の為におもちゃ買っといてあげるから、またいつでもおいで、理一」 「おもちゃ!?」 理一の気を引け、陽平くんと理一が玄関先で手を繋いだ。 「では、また、ご馳走様でした」 と陽平くんが頭を下げ、理一は、バイバイまたね!と大きく手を振り、部屋を後にした。 二人が居なくなった部屋はなんとなく味気ないもんだ。 食器類は陽平くんが洗っていてくれたから、俺は風呂にする事にした。 頭を洗っていて、ふと目の前の鏡に映る自分の顔を見つめた。 「....ママ、ねえ...」 思わず、自分の頬を撫でる。 猛々しい男、て訳では無いが、特別、女っぽい、て訳でもない、良くある顔だと思うんだがな...。

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