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第5話

日曜日。 先日、陽平くんが理一と遊んでいた、うちのマンションの近所の公園で待ち合わせ。 こないだはスーツだった俺も、シャツにチノパンと軽装だ。 公園に着くと、ベンチに座る陽平くんの膝に抱かれた理一の笑顔。 仲睦まじい親子の姿に思わず頬が綻んだ。 陽平くんも理一に微笑みかけたり、たまに怒ったりと忙しなく表情を変えながらパーカーにデニムパンツと軽装だ。 俺とは違い、会社員ではない陽平くんは先日もTシャツにデニムだったけど。 「あ!ママだー!」 俺を見つけた理一が指を差し声を上げ、一目散に走り寄ってきた。 「り、理一、ママじゃない!」 周りの視線を一斉に浴びた俺は慌てて二歳児の小さな理一の視線に合わせる為にかがんで言い聞かせる。 じ、と暫く俺を見つめていた丸い無垢な瞳が瞬く間にうるうるし出し、唇がわなわなと震え出した。 「ま、ママじゃない....?」 陽平くんも駆け寄り、俺にすみません!と、頭を下げた。 「ママじゃないのーーー!?」 びえーん、と園内に響くようなボリュームで泣き出し、こりゃ困った、と、策を練ってみる。 「ま、ママはな、名前があるんだ。ほら、理一も名前があるだろ?」 「なまえ...?」 ぐす、と鼻を鳴らし、理一が涙目で真摯に俺を見る。 「ああ、ママはな...誠、ていうんだ、マコト」 「...まことちゃん...?」 ...よりによって、まことくんでも、まことさん、でもなく、まことちゃん、と来たか....。 が、あまり泣かせるとこれまた目立つしな...。 ママ!って呼んだ時ですら、園内で気づいた大人や子供を問わない人達の視線が痛かった。 「本当に先日も夕飯までご馳走になったっていうのに、もうなんてお詫びしたらいいか...」 陽平くんがいたたまれない様子で何度も頭を下げ、 「和菓子がお好きか洋菓子がお好きかわからなかったものですから...」 二つの紙袋を手にした陽平くんに、 「わざわざすみません」 「何処かでお食事でも、と思うのですが、理一が騒ぐと面倒なので...」 「理一に約束していたおもちゃ、用意したんで」 陽平くんが目を見開いた。 「えっ。その場しのぎではなかったんですね、本当にすみません!ありがとうございます」 再び、陽平くんが慌てふためきながらも頭を下げた。

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