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第13話
日曜日の約束の前日の土曜日の夕方。
陽平くんから一通のメッセージがあった。
『すみません、理一が熱を出してしまい、明日は難しいかと思います』
との事。
土日、祝日と休みな俺は、メッセージに気づくなり、すぐ、
『今、電話、大丈夫ですか?』
とメッセージを送っていた。
10分は経たないくらいか、陽平くんが、
『大丈夫です』
との事で、慌てて電話。
「あ、もしもし、陽平くん。理一が熱?大丈夫?」
「はい。さっき病院から帰宅しました。風邪らしいです。いつもの事ですし...」
「いつも...」
「子供は免疫力が弱いからか、風邪を引きやすいらしいんです。今、ようやく寝かしつけて...」
「あの」
「はい」
「...良かったら位置情報、送って頂けないですか?俺ももう、他人事と思えないというか...何か必要な物はありませんか?」
陽平くんが電話越しからも、たじろいだのが伝わった。
「で、でも...申し訳ないですし...」
「今更ですよ、頼ってください、いつでも」
しん、と静まった後の電話の向こうの陽平くんの声は若干、涙声だった。
「あ、ありがとうございます...」
そうして、陽平くんの送ってくれた位置情報を元に、車を走らせた。
「ここ、か...?」
見上げたアパートのあまりの古さに瞬きすら忘れた。
カン、と音を立て、二階建ての今にも崩れ落ちそうなメッキの階段を上がる。
そして、どうやら、インターフォンは壊れているらしく、三回、ノックをし、ドアが開いた。
「誠さん...」
「理一はどうですか?」
「まだ熱が...汚いし狭いんで恥ずかしいのですが...どうぞ」
陽平くんに促され、玄関に。
狭い空間で靴を脱ぎ、部屋へと上がり、また愕然とする。
俺の部屋は1DKのフローリングだが、陽平くんの部屋は本当に狭く、畳の和室で、1kと思しき、本当に狭い部屋だった。
真っ先に理一が眠る布団に向かう。
いつも笑顔を浮かべるその顔は熱のせいか、真っ赤だ。
胸が苦しくなった。
「必要そうな物は一応、買ってきたのですが...」
途中コンビニで買ってきた、額に貼るシートやプリンやヨーグルトの入った袋を陽平くんに手渡した。
「本当にすみません...ありがとうございます...」
ふと、とある思案が浮かんだ。
「あ、あの、陽平くん」
「はい」
「良かったら、なんだけど...俺の母に理一を預かって貰う、てのは...」
三人の子供を育て上げた母だ。
きっと陽平くんより色々慣れ、捌けているんじゃないだろうか。
「え?で、でも...申し訳ないです、そんな...」
陽平くんの返事を待つ前に、俺は熱にうなされる理一を見つめたまま、スマホを取り出し、実家に掛けていた。
「母さん?こないだ話した、知り合いの息子さんがさ、熱出したんだ」
「あらあら、熱?大丈夫なの?」
「良かったら母さん、今はずっと家だろ?」
「ええ、そうね。私で良かったら預かってもいいけれど...お幾つ?」
「二歳」
「風邪を引きやすい年頃ね、いつでも連れてらっしゃい」
母とのやり取りを見ていた陽平くんに、
「さ、行きましょう」
と声を掛けた。
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