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陽平side~

陽平side~ まさか、誠さんが結衣のお兄さんだったなんて...。 だから、理一、誠さんをママ、だなんて抱きついて行ったのかな...。 トップスの胸元を握り締め、お義母さんに抱かれている理一を見つめる。 「陽平くんも疲れたでしょう?理一は私が看病するから、安心して。誠の部屋で良かったら休んで?ほら、誠、陽平くんを案内してあげて」 頬を赤くし、熱でぐったりしている理一はお義母さんに抱かれ、別室へと移動した。 念の為に、とお義母さんに理一の保険証を渡し、 「狭いけど」 と、微笑む誠さんの後を追う。 階段を上がり、誠さんは突き当たりのドアを開けた。 「俺は下にいるから。ゆっくり休んでください。布団も母さんが洗濯してくれてると思うし。何か足りないものとか困ったことあったら遠慮せず」 「は、はい...」 「あ、トイレ。大丈夫でした?案内しようか?」 敬語になったりタメ口になったりする誠さんに思わず、小さく吹き出し笑ってしまった。 「良かった」 「....え」 「ずっと険しい顔してたから。ようやく笑顔が見れた気がして」 誠さんの優しい眼差しに見下ろされ、何故か、心臓がどく、と跳ねた。 「トイレは階段を降りて、左奥にあるんで」 「あ、あの」 背中を見せかけていた誠さんが振り返る。 「そ、その。1人だと、なんか落ち着かなくて...良かったら、その、一緒に...て、な、なに言ってんだろ、僕」 慌ててせせら笑う。 が、誠さんは再び優しい笑みを浮かべた。 「いきなり知らない男の部屋に1人、て落ち着かないよね。俺は本でも読んでるかな。さ、入って」 「お、お邪魔します...」 誠さんが学生時代に過ごしただろう一室。 きちんと整頓されていて、誠さんの上品な部屋とは少し違うけど、清潔感は変わらない。 窓際の片隅にダブルと思しきベッド、反対側には学習机、隣には背の高い本棚。真横にはテレビと中央には四角いテーブル。 「狭いでしょ」 「いえ...」 確かにあの誠さんのマンションの一室に比べたら狭いけれど... 僕の部屋も人のことは言えない。 口にはしなかったけれど、喉の奥が詰まる感じがした。

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