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3-安藤

「三島センパーイ、管理がこんな所で何してんすか?」 「なっ……お前いつから…」 おーおー、ビビってるビビってる。 こりゃ突入して正解だな。まさかアレが致すまでのユニークなプレイの一環だったなんて事態なら土下座ものだったが、そんなに世の中は平和じゃなかったって事だ。 そこには机へ頭部を押し付けられた今にも泣きそうなヤマダと、床に散らばるいくつものファイル。そしてヤマダの服を引っぺがそうと手を掛ける三島が居た。 鍵を仕舞うと同時にスマホを取り出して見せれば、予想通り三島の顔つきは変わる。 「えっと、何でしたっけ。社内メールで一斉送信?なら俺も、さっき録音したモン全社員に送る事出来ますけどどーします?」 「……っ、録ってやがったのかよ。汚ねえ」 「交換条件でどっすかね。皆から期待されてる三島先輩が、まさか掃除のにーちゃん脅してるなんて知られたら……」 歯軋りなんかしちゃってザマぁねーな。 人にされて嫌な事はしちゃダメって習わなかったのか?こいつ。散々良い思いして今まで生きてきたんだろうよ。俺以上にな。 ゆっくりと迫れば、それはもう安いドラマの演出みたいにじわりじわりと後退る三島は滑稽だった。ま、俺が用があるのはお前じゃないから安心しな。 「じゃあそう言う事なんで。下に落ちたの、ちゃんと拾ってから戻ってくださいね。 …ヤマダ、行くぞ」 「まっ…待ちやがれ!クソ野郎!」 負け犬の遠吠えもいい所だ。部屋の外には出て来もしない癖に、一丁前に人の事クソ呼ばわりしやがって。 俺をクソだのゴミだの罵ってもいいのは、今俺の後ろにいるコイツだけだっての。 「大丈夫だったかー?」 「なん、で……ていうかどこ向かって…」 「非常階段。取り敢えず避難だよ、マジで追い掛けてきたらシャレにならん」 今日は触っても、ぶっ叩いて来ないのか。 …いや別に嬉しいんだけどね。この状況で振り払われたら傷つくし。 でも、それだけ怯えてんだもんな。握り返された掌にはぐっしょりと汗が滲み、細かく震え続けている。 どんな重大な秘密なのかは知らないが、そんなにバレたくないのならもっと警戒しても良いだろうに。でなきゃ、アイツみたいに利用しようとする奴にまた狙われるぞ。本当に、目が離せないんだから。 「しばらくここに居りゃ大丈夫だろ。何かあっても階段なら逃げ場はあるし」 「え…」 一刻も早く戻ってやらなきゃ、2人も居ないあの部署がまともに回るはずが無い。 それに、三島に怪しい動きがないかも気にしておきたい。 だが、踵を返したその時だった。 ドアノブを回しかけた手首を掴まれ、驚きの余り思考と身体が停止する。 「お、置いてくなよ……俺あんなに怖い思いしたのに…安藤の、ばか…」 「んぬうぅぅぅうッ?!」 え、何?そう言う奴なの、お前。普段とのギャップすご…つーか名前!今初めて俺の事まともに呼んだ! なんだよ、本当に。 どこも行けねえじゃん…。

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