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5-山田

初めから少しサイズが大きくて、ベルトで何とか締め付けていただけの作業着は安藤の手によって簡単に暴かれる。 今、安藤の視界には俺の情けなく膨らんだ性器が映っているのだと思うと泣き叫びたくなった。嫌だって、一刻も早く大きな身体を押しのけて逃げ出したかった。 でも出来ないんだ。安藤の事、俺思った以上に大好きみたいだ。…こんな状況であるにもかかわらず、自身は更に熱を集める。 「ケツ濡れてんの…お前が経験無くても、Ωの身体はちゃんとわかってんだな」 「…っ、あ…待って」 誰にも触られた事のない所だ。自分でもシた事なんか無い。ヒートは意地でも薬一つで耐えてきたから。 そんな汚い場所に、安藤は焦点を合わせ薄ら笑いを浮かべた。 「抱いてやるよ」 「ぁ、あ…やだ、あッ──?!」 その瞬間、尻に激痛が走った。ぼやけた視界の先では、俺のソコへ安藤の長い指が勢いに任せて侵入している最中で。 痛い。裂けちゃうよ、こんなの…だって当たり前だ。今まで触れた事もない所に、突然指なんか突っ込まれたら怪我するに決まってる。 「いた、い…安藤やだ、やだ痛っ……止めて…」 全身のあらゆる部位を振り回し、安藤に訴える。俺が全力で暴れてようやく、彼の指たった一本の動きを止められた。 「痛い、よぉ……っ、う…」 ずる、と指を引き抜かれる不快感は相当で、もう何もされていないというのにとめどなく涙は溢れ続けた。 何で俺、安藤にこんな事されてんの。安藤って本当はすごく酷い奴なの?俺の事友達って言ってくれたのに、やっぱり他のαと同じだったの…? 「あーぁ残念。萎えてんじゃん」 「……っ、」 膝までずり下がっていた俺のズボンを下着ごと押し上げると、安藤は目も合わせずに立ち上がる。 自身の精液を溜めたゴムを簡単に括り、ベルトの穴を探る俺の目の前に差し出した。 「お前ってゴミ集めんのも仕事だろ?コレよろしくな」 まだ温かいそれを掌に落とされれば、嫌でも顔が熱くなる。 「俺さー、こういう奴だから。毎日ゴム持ち歩いてっし、誘われりゃ誰でも抱ける。 俺のこと過大評価してくれてんなら申し訳ねーんだけど、お前の言う通り“クソ”だよ。…じゃ」 恥ずかしかった。 何一つ言い返す言葉が見つからず、だからと言って「そんな事ない」なんて庇える程俺は安藤を知らない。 薄い一枚きりの膜を隔てた白濁は、手の上でどろりと揺れて気持ち悪い。ポケットティッシュの残りを全て使い果たして、大袈裟に隠した。 あぁ、人生でここまでの屈辱を受けた事が今までにあっただろうか。 独りになったその場所で、声を押し殺して泣いた。 …俺、好きになる相手ぜってぇ間違ったなって。苦しくて、痛くて、冷たくて、切なくて。 折角袋に入れたのに、結局ハンカチも渡せなかった。

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