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6-山田

「なんで…?なんでンな事言うんだよ……っ。噛みてぇんだろ?!噛んだらいいじゃねぇか!」 叫んで、泣きじゃくって、縋り付いて。 こんな欲望に塗れたΩの醜態晒して、何してんだろう。嫌われてんのに、馬鹿みてぇだ。 どうせ噛まれたところで捨てられて、俺は一生独りで発情に苦しみながら死んでいく。わかっていても、止まらない。 これがΩなんだ。人から忌み嫌われ、下品な悪口を散々言われるΩなんだ。 一度でも“友達”と言ってくれた数少ない相手に…それも、初めて好きになった安藤にすらコレじゃ救いようがない。 「おち、つけ……な?大丈夫だから……俺、強い薬持ってんだ。りゅうの…身体楽に…今して、やるから、」 途切れ途切れに言葉を吐き出した安藤は、自身のポケットを漁ると半分に切られた錠剤のシートを取り出した。それは俺には手も出せない、保険適用外の強力な抑制剤。俺はたまたま調べた事があるから知っているだけで、多分Ωの中には見たことも聞いたことも無いって奴も大勢いるだろう。 そんなものを、どうして安藤が…。 「やだ…やだ!安藤がいい。薬なんて…のみたく、な…い!」 「な、やめ…っ」 俺は、安藤の手からそれを奪うと迷わず放り投げた。残っている力を全部使えば、同じく力なんてとっくに入らなくなっている安藤の掌に勝つ事が出来たから。 そうすれば、本当にもう…安藤は丸腰だ。俺に耐えられなくなるのも時間の問題。 「…噛んで、安藤……」 完全に脳みそがぶっ飛んでなきゃ出来ない事だ。俺は張り詰めた自身を安藤に押し付けたまま、ゆっくりと腰を動かした。引き締まった腹筋をなぞり、ベルトを通り越せば、安藤のも…大きくなっているのがわかる。 服越しでもビクビクと脈打っているのが伝わるし、感じた事も無いほど熱くて今にも溶けそうだ。 鼓動は早まり、密室に蔓延る互いのフェロモンは濃厚に混じり合い、深く溺れていく。 「りゅ、ぅ……マジで、一回はな…離れて」 「やだよ」 先に離れなかったのはお前じゃねぇか。もう遅いんだ。俺はもう待てない。我慢なんて効かない。 辛うじて残っている理性すらも焼き尽くすように、高まる熱を全身に帯びて。 目の前の唇から零れた銀の糸を舌で掬った途端、安藤の顔つきが変わる。 それは猛獣よりもずっと恐ろしい形相で、視線は俺の目から外れて首元へと降りた。だが、充血した目は未だに迷いを捨てきれていない。なんて強情な奴だろう。Ωの頸に噛み跡を残すくらい、αにとっては簡単な事の筈なのに。 「聞け、りゅう……っ俺らは、ぁ…う、めいの……番なんだ…っ。お前のその、かんじょ……全部、本能のせい…で、ッ」 「……へ?」 放たれた言葉は信じがたく、失いかけた理性をかすかに取り戻せるくらいには、衝撃的だった。

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