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7-安藤

帰宅し、ベッドに寝転んだと同時に電話をかけていた。りゅうが心配で、落ち着いてなんていられなくて。 澄晴にも、来碧ちゃんにも悪い事しちまった。“お前がいながら”って、本当そうだよな。何してんだろ。 「俺正直、さっきの事あんまり覚えてなくてさ…りゅうは大丈夫だったか?俺……なんか変な事したりとか…」 守らなきゃとか、助けなきゃとか、何とかしてやんねーとって思う気持ちは確かにあった。だが、それと同じくらい暴れ回るものがあった。襲いたい、噛みたい…俺のものにしたいという最低な欲望だ。 最後はもう頭ん中ぐちゃぐちゃで、記憶すらも曖昧だ。りゅうが俺の名前を叫んでいた事だけは覚えている。でもそれも、俺を求めていたのか拒絶していたのかはわからない。 りゅうの本当のヒートがここまで俺を狂わせるのは流石に想定外だった。運命の繋がりの深さは相当なのかもしれない。 『えっと…何も無かった、そうだよ。本人も記憶は曖昧らしいけど、外傷とかは無いって』 「…っまじか〜〜〜よかった」 『薬で症状も落ち着いてる。だから安藤もしっかり休めってさ』 「………?おう」 何だろうこの違和感。いや、澄晴がりゅうを送るっていうのは池田っちに聞いたから恐らく道中で聞いた情報ではあると思うんだけど。 なんか…まるですぐ隣にりゅうが居るみたいな口ぶりで──。 『そろそろ俺を通してじゃなくて、2人で話したらどうだ?』 『は?!テメェ何ばらしてんだよぶっ殺すぞ!』 「ん?!?」 突然横から入ってきた聞き覚えのある声色に、どくんと心臓が跳ね上がる。変な汗かいてきた。いや、顔急に熱いし目眩しそうなんだけど。もしかしてもしかしたらこれって…。 「今の会話…全部りゅうに聞こえてた……?」 『すまん。スピーカーにして話してた』 「いつから?!」 『大丈夫か?からだ…』 「第一声じゃねーか!」 嘘だろマジかよ勘弁してくれ。俺変な事言ってないっけ。セックスしたくて堪らなかったとか漏らしてないっけ。泣き言言ってないっけ。 「………あーもう。はっず」 『マズイと思ったらスピーカー辞めようとは思ってたから…』 いやそれ間に合う? ほんと抜けてんだよな、コイツ。憎めねー奴ではあるけどさ。…ま、いいや。元気なりゅうの声が聞けて安心したのは事実だ。 「なー澄晴。あとで俺の連絡先りゅうに教えといて」 『知らなかったのか?!』 「知らねーよ聞いてねーもん」 『そうか…なんか意外だった。わかったよ』 「じゃあな」 通話を終了し、再びベッドへ寝転んだ。意外って何だよバーカ。人の事なんだと思ってんだよ俺だって何となく聞き損ねてそのままだなーとか100回くらい思ってたわバーカ。 「…はあ〜〜」 静かな部屋に大きなため息が響く。安堵や恥ずかしさ、色んな感情が空気となり吐き出されれば、少しだけ身体が軽くなった気がする。 連絡、してくれっかな。 なんて、淡い期待を胸に目を閉じたのだった。

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