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7-安藤

それからも暫く通話は続いた。俺は明日ももちろん仕事だが、りゅうは1週間程度休みを取るらしく、順調にいけば来週の明けの出社になるそうだ。 折角こうして普通に会話が出来る関係性に修復出来た中で1週間以上も会えないのは残念だが、実家暮らしでその状況では無理する事など不可能だし、何よりりゅうに無茶はしてほしくない。 いつ会えるかもわからない、話す事すら諦めた2ヶ月に比べればこれくらいどうって事ないと自らに言い聞かせる。 「身体楽な時、暇だったらいつでも連絡して来いよ。仕事中でも返せるし」 『バーカ仕事しろっていつも言ってんだろサボリーマン』 「はっはっは。俺営業だから勤務中にドヤ顔でスマホ触ってても何も言われねーのよ」 『ゴミだなマジで。空き缶と一緒に回収してやろうか』 「うわひっでー。暇つぶしに使っていいよって言ってやってんのにその態度ですよ」 久しぶりだ。このやり取りも。 俺にこんな風に正面切って暴言吐ける奴そうそういねーっつーの。今だけで「バカ」「サボリーマン」「ゴミ」のトリプルパンチだ。微塵もイラつかねー俺ってもしかしてM気質あるんじゃね?って疑いそうになる。 『…安藤明日も仕事だもんな。ダラダラ長くなって悪かった。もう切る』 「えーもう?俺いつも2時くらいまで起きてるし平気よ」 『いや…これ以上は俺が薬切れそう』 時計を見れば、すでに日付は跨いでいた。誰かと長電話する事は珍しく、通話が終わるタイミングがまさかここまであっさりしていて寂しさを覚えるなんて知らなかった。 多分、通話相手がりゅうではない他の誰かだったのなら、その相手ともっと話していたいと思ったのなら、俺は迷わず自分勝手に通話を続けるよう頼み込むだろう。甘え方も熟知している。 けれど、りゅうだから。りゅうは特別だから。 「そっか。しんどくなる前に寝れるといいな。起きて、しっかりメシ食って、楽になった頃また連絡くれよ」 『…わかった。ありがと。……迷惑かけてごめん』 「迷惑かけられた記憶ねーし、謝られる事した覚えねーよ俺。……色々、お互い様だったろ」 『……うん』 流石に、指一本で痛いと泣き出して暴れ回ったりゅうにテレセを仕掛ける気分にはならず、俺に出せる最上級の優しいトーンを目指した「おやすみ」に、吐息混じりの返事を聞いて通話を終了させた。

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