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【SIDE:L】

「最悪だ……」  通知のないLIME画面を見下ろし、俺は、頭を抱えていた。  売り言葉を買いすぎてヒートアップしてしまった頭を冷やしたくて風呂に入って、出てくる頃には、理人さんはもうすやすやと寝息を立てていた。  その寝顔が穏やかなことに安堵しつつ、でも目尻に涙の跡が残っているのが見えて、心臓がギューッと鷲掴みされたみたいに痛んだ。  本当は潜り込んで隣で寝たかったけれど、理人さんがベッドのど真ん中に寝ていたから起こすのも忍びなくなって、丸まった細い身体にブランケットをかけてからソファに移動した。  電気を消して目を瞑ってみても、脳が興奮しているせいか、なかなか睡魔がやってきてくれない。  そうこうしているうちに空が白み始め、ようやくウトウトできるようになったと思ったらもう家を出る時間で、理人さんの食事も作れないまま、急いで家を出た。  それから、あっという間に数時間が経ち、窓から見える空に、もう太陽はいない。 「完全にタイミング逃した……!」  ベッドを独り占めするなって笑って、無理やり隣に入り込んでやれば良かった。  今朝だって、わざと足音を忍ばせたりしないで、いつもみたいに「行ってきます」のキスで起こして、その流れで謝ってしまえばよかったんだ。  忙しいフリなんてしないで、仕事の合間に電話すれば良かった。  引き伸ばせば伸ばすほど気まずくなると分かっていたのに、俺は、どこまで女々しいんだ……!    ーー俺の過去なのに、佐藤くんが引きずってんなよな!  木瀬さんのことだって、理人さんの言うとおりだ。  二人の関係はもうずっと前に終わっているのに、いつまでもグチグチ言われ続ければ、理人さんが怒るのも当然だ。  でも、木瀬さんが木瀬さんじゃなかったら、俺だってこんな気持ちにはならなかったのかもしれない。  木瀬さんがかっこ良くて、優しいくて、仕事もできて、俺よりも理人さんよりも年上で、余裕があって、男らしい人だから。  だから俺はーーいや。  違う、そうじゃない。  これじゃあ、今までと一緒だ。  だめだ。  変わらないと。

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