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第12話

 下から突き上げられる快感に、麻陽はすっかり溺れていた。  横になった客にまたがり、最初は麻陽が動いていたのだが、今では客が主導権を握り快楽を追うだけの動きを繰り返す。  がくがくと深く揺さぶられるたび、痺れるような快楽が突き抜けた。その快楽と勢いに麻陽はつい倒れてしまいそうになるけれど、客の腹に手をついてなんとか堪える。 「あ、イくぞ、ほら、もっと締めろよ」  蜜液が散り、激しさを見せる。  奥を突かれるたびにきゅんきゅんと奥を締め付ければ、動きはさらに速くなった。 「は! あ、ぅ! イく、イっひゃう、あ!」 「あー……出る、やば」  突然起き上がった客が、乱暴に麻陽をベッドに押し付けた。上から覆いかぶさるように腰を掴み、ふたたびガツガツと腰を打ち付ける。 「あん、あ、あ、ああっ! 気持ち、い! そ、こぉ……!」 「あ、ああ、イく……ん、あ、くそ、イくっ!」  麻陽の脚が、誘うように客の腰に絡みついた。それと同時、客は麻陽のナカで果てる。余韻を楽しむように数度ついばむキスをすると、客はあっさりとそれを引き抜いた。 「あっ……やだ、行かないで」 「もう時間なんだよ」 「ちゅうしたい」  起き上がって着替えを始めた客に、麻陽はぴたりとひっついた。少しの隙間もなくキスを繰り返す。ちゅうと音を立ててキスをすれば、麻陽の中に安心感が広がっていく。 「あー……もう、勃つって」 「勃ったら抜くね」 「ん、こら、あっ……」  キスをしながら、麻陽の手が体に触れる。しかしもう本当にギリギリだ。戯れている暇もないと、客はなんとか麻陽を引き剥がし、着替えを済ませて部屋を出た。  あまり好きではない瞬間である。  一人残された部屋が嫌いで、麻陽はすぐにシャワー室に向かった。  次の客まで一時間。寝るのもアリかと髪の毛を拭きながら部屋に戻ると、ベッドの側でスマートフォンが光っているのが見えた。  メッセージが一件。どうやら彼からである。 『電話がしたい』  何かがあったのだろうか。そうは思うも、この間の話をまたされるのは嫌だなと、なんとなく断ってやりたくなった。  彼は麻陽のためと言って、麻陽を九十九やこの店から引き離そうとする。麻陽に"普通"をすすめてくる。だけど麻陽にはそんなものは要らない。麻陽は今のままで充分楽しいし幸せなのだ。  見なかったフリをして、返事もせずにトークルームを閉じた。罪悪感はない。緊急を要することであればまたメッセージは来るだろう。  次の客まで眠ろう。そう思って、麻陽は静かに目を閉じた。  麻陽を起こしに来たのは早乙女だった。ちょうど一時間。麻陽はしっかり寝ていたらしい。  客を迎えにロビーに行って、すぐに部屋に戻る。ちなみに入ったのは接客用の部屋で、麻陽の本来の部屋ではない。つくりは一緒だが場所は違うために、麻陽のプライベート空間はしっかりと守られている。  部屋に入ると、客はさっそく麻陽にキスをした。麻陽もすぐに客にすがり、キスが深くなっていく。  服を脱がせてベッドで絡み、触れ合っていれば体が昂る。客が腰を突き出すと、勃起した中心が揺れた。麻陽は察して躊躇いもなく口を近づけ、唾液を絡めて舌先で遊ぶ。 「あー……気持ちい……ヨウ、フェラうまいな……」 「ん、んむ」 「もう挿れていいだろ? 柔らかいよな?」 「う、ふぅ……」  強引に顔を引き離すと、客は麻陽を投げるようにうつ伏せに倒した。そうして腰だけを掴みあげ、一気に奥まで突き立てる。枕に顔を埋めていた麻陽は、一瞬で突き抜けた快楽に体を震わせた。 「あっ! お、くぅ……!」 「開発されすぎだろ、奥がいいとか」  客は執拗に奥ばかりを突き上げる。それにびくびくと反応する麻陽を見下ろして、満足そうに笑っていた。  すると、麻陽の枕の近く。そこで麻陽のスマートフォンがひそやかに震える。  どうやら着信のようだ。麻陽は快楽に手一杯で、着信には気付かない。 「あ! いい、もっと……して、たくさん、してぇ」 「ああ、やべー。なあヨウ、今日はもっと興奮しちゃっていい?」 「あ、して、して、興奮して、たくさん出して、」 「オッケー……」  客の手が麻陽のスマートフォンに伸びた。そうして画面をタップすると、通話画面に切り替わる。 「ん、う! あ、気持ちい、奥、突いて、ほしぃよぉ……!」 「ああいいよ、もっと聞かせて、ほらヨウ、何が欲しい?」 「あっ! ぅ、おちんちん、で、奥……ほしっ、」 「もっといやらしく誘って」  ぐちゅぐちゅと濡れた音が響く。肌がぶつかる音も、キスを繰り返す音も、麻陽の断続的な甘い吐息でさえも聞こえているだろう。客は横目にスマートフォンを確認し、近くで麻陽にキスをした。貪るようなそれは激しく、麻陽の酸素を容赦無く奪う。 「あ……はふ、ひ、もひぃ、奥ぅ、」 「中出ししていい? ヨウが可愛すぎて、中出し以外無理」 「ん、して、おちんちんで、奥突いて、たくさん出して」 「かわい……」  キスをしながら、腰の角度が変わる。  膝裏を持ち上げられて、叩きつけるような体勢になった。 「ひ! あっ……! イく、イくイく、いっ!」 「あー、俺もイく。ヨウ、可愛いよ、すげー感じる」  真上から繰り返し打ち付けられて、麻陽の頭も真っ白になった。  気持ちのいいことしか考えられない。このまま溺れてしまいたい。ばちゅばちゅと乱暴に打ち付けられながら、麻陽は大きく体を震わせた。 「あっ、んぅ! あ……」 「あー……めっちゃ出る……ヨウ、エロすぎ……」  射精しながら、体を倒した客が麻陽にキスを落とした。すると麻陽も客の唇を追いかけて、甘えるようにキスを繰り返す。  客がちらりとスマートフォンを横目に見つめる。まだ通話中だ。それにゾクゾクと興奮した客の中心は、麻陽のナカでふたたび固く変わる。 「あぅ……また、する……?」 「うん。していいだろ? ヨウ、俺のちんこ好き?」 「好き。大好き……もっとしたい」 「いいよ……ん、こらヨウ……本当キス好きだな」  ちゅ、ちゅ、とキスを繰り返しながら、客が腰を揺らし始めた。  そこでさりげなく通話を終わらせた。あまり長引かせると、麻陽にバレてしまうかもしれない。 「あ、もっと、動いてぇ……」 「あー、俺今日五回くらいできっかも」 「うん。しよ」  キスをしながら、律動が速くなる。  麻陽は揺さぶられながら、客に必死にしがみついて快楽を味わっていた。  

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