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第36話

「あ、ああ、ことり、さ……あっ……」 「可愛いよ、麻陽」  吐き出した精液をぬるぬると中心に塗りつけるように、小鳥遊の手が緩やかに動く。  射精させることが目的ではないその動きは簡単に麻陽を追い詰めて、またしてもそこが力を持った。 「ナカはどうなってる?」  小鳥遊の手は撫でるような動きで中心を伝い、睾丸に軽く触れてから蕾にたどり着いた。すでに蜜液が溢れて、近くに触れるだけでもぬるりとした感触がある。  もっと脚を開くように小鳥遊が誘導すると、麻陽はあっさりとそれに従った。 「……麻陽……そんなこともしてくれるのか……」 「ことりさん……挿れて……」 「もう少し触らせてくれ」  触れるだけのキスをした小鳥遊は、麻陽の体をくるりと反転させた。体を起こして尻を突き出すように持ち上げ、尻を両側から開いてじっくりと見つめる。  膨れた蕾。セックスに慣れたそこはすでにきゅうきゅうと収縮して、物欲しそうにうねっていた。 「……これは………」  深い嫉妬と興奮で複雑な心境だ。  蕾を撫でると、麻陽がびくりと大きく震えた。早く挿れてほしいのか艶かしく腰を揺らし、甘えた声で小鳥遊を呼ぶ。そんな光景にゴクリと喉を鳴らした小鳥遊は、すぐに顔を近づけた。 「へ……? え、あっ! やだ!」 「んー?」  蕾から溢れていた蜜液を舐めとるように、小鳥遊の舌が激しく動く。蕾を舐めて吸い上げ、次から次に溢れてくるものもすべてを飲み干していた。  その感覚に、麻陽はガクガクと体を揺らす。そんなところを舐められたことなんかない。客は奉仕を望むばかりで、麻陽に尽くそうとした者は居なかった。  舌が蕾を割いて、ナカに深く侵入する。  慣れない快感だ。だけど小鳥遊がそんなところを舐めていると思えば、麻陽の興奮が増していく。  普段は爽やかな顔をしている彼が、今はあんなところを舐めている。たったそれだけの認識で、麻陽は達してしまいそうだった。 「あ、あっ、ことりさ、気持ちい、よぉ」  じゅるりといやらしい音を立てていたそこに、舌よりも太いものが侵入した。  肉を割いて奥にすすむ。入り口はいまだに舐られながら、小鳥遊のたくましい指が二本、麻陽のナカを探っていた。 「あ! そこ、ことり、さっ……!」 「ここ? 麻陽、ここが気持ちいい?」 「そ、こ! 気持ちい、ことりさ、あっ」  ナカにあるとある一点。そこが良いと言えば、小鳥遊はそこばかりを刺激する。  焦らすこともない甘いだけのセックスだ。過度に快楽を与えられて、麻陽の頭の中はすでに真っ白になっていた。 「ここに触れると、麻陽の匂いが濃くなるな。……頭が痺れる、アルファを狂わせる匂いだ……」  もっと濃い匂いにしようというのか、小鳥遊の手つきはさらに激しく変わる。  溢れた蜜液が飛び散っていた。しかし小鳥遊には関係がない。麻陽のフェロモンを感じながら、吹き飛んでしまいそうな理性をなんとかつなぎ止めていた。  ここで小鳥遊が理性を失えば、間違いなく麻陽を抱き潰すだろう。ただでさえ麻陽は小さくて華奢だ。そんな麻陽に小鳥遊のような平均よりも大きいアルファが全力でぶつかれば、麻陽はきっと壊れてしまう。  優しく、丁寧に、焦って怖がらせないように。いくら麻陽がセックスに慣れているとはいえ、小鳥遊との……アルファとのセックスは初めてである。ここで何かを間違えて「もうしたくない!」と言われるのは避けたかった。 (ああ、まずい。クラクラする……) 「イく、あっ! あん、ことりさ、出ちゃう、っ!」  甘い声が聞こえる。甘い匂いが香る。誘うように麻陽の腰は揺れて、刺激をすればするほど奥から蜜液が溢れてくる。どれほど舐めても追いつかなくて、それは麻陽の内腿にも垂れていた。  このままイくところが見たい。その一心で指を動かしていると、やがて麻陽は二度目の絶頂を迎えた。 「あ! イく、ぅ!」  大きく背をそらせて、小刻みに震える。そうして尻だけ突き上げたまま、麻陽は力なく上体をベッドに沈めた。  きつく締めつけていたナカから、ずるりと指を引き抜く。すっかり解されたそこは開いたままでなかなか戻らず、甘い香りを漂わせていた。 (……挿れたい……)  開いたままの蕾に、ふたたび唇を寄せて舌を入れる。 「ひあ、ことりさん……!」 「はぁ……麻陽……美味いよ、挿れたい。おまえの匂い、たまらない」 「あ、本当? 分かる、の、僕のフェロモン……」 「分かるよ。ぶっ飛びそうだ。……麻陽……」  散々舐めて吸い上げた蕾から顔を離すと、麻陽がふらりと体を起こした。  つられるように座った小鳥遊に、麻陽はしなだれるようにもたれかかる。そうして上目に見つめたかと思えば、麻陽はそのまま小鳥遊に口付けをした。  どちらともなく口を開き、舌が絡まる。麻陽がぐいぐいと押すものだから小鳥遊は後ろに尻をつき、気が付けば麻陽が小鳥遊に乗っかるような体勢になっていた。 「ことりさんの……すごい、おっきい……」  スウェット越しにも分かるのか、麻陽はそこに腰を擦り付ける。  麻陽の尻に挟まれて、小鳥遊の中心がさらに膨らむ。布越しの快楽はあまりにももどかしいが、逆に興奮を煽るようだ。 「ああ……麻陽、そんなにしたら……ダメだ、脱がせてくれ……」  微弱な快楽があまりにも辛かったのか、小鳥遊はすぐにスウェットを脱いだ。  麻陽も同じように服を脱ぐ。二人して全裸になると、麻陽はやっぱり小鳥遊に乗っかりキスを繰り返す。 「あ……ことりさん……入っちゃう……」 「ま、待て、ゴムを……するから、」 「でもほら、ぬるぬるで、どうしよー……」 「こら、今……」  麻陽の尻が、小鳥遊の中心を挟んで揺れている。尻で扱かれてはもう限界で、小鳥遊も挿入をするべくベッドサイドからコンドームを取り出した。  指先が震える。うまく開封できない。フェロモンにくらくらとしながら快楽に煽られて、力の入れ方さえ分からなかった。  そんな小鳥遊の努力もつゆ知らず、麻陽はひたすら腰を揺らす。  麻陽の蜜液と小鳥遊の先走りでぬるぬるのそこは、小鳥遊の先っぽが蕾に引っかかるたび、簡単に入ってしまいそうだった。 「まっ……もう少し……で、」 「あ、入った、ことりさ、先っぽ、ぉ、」 「ぐ、ぅっ……!」  存外あっけなく、ぬるりとのみ込まれてしまう。  膨らんだ先端がナカに入り、麻陽はピタリと動きを止めた。  小鳥遊の瞳の奥で理性が揺れていた。そんな瞳を見つめながら小鳥遊を抱きしめると、麻陽はついばむキスを落とす。 「挿れて、奥、ことりさん……突いて」 「ん、あ、やめろ……ま、だ、ゴムを……」  麻陽が微かに腰を揺らせば、先っぽだけがナカで扱かれた。  敏感なそこが肉壁に包まれ、容赦無く擦られる。粘膜が触れ合う快感に歯を食いしばってなんとか耐えていたのだが、小鳥遊が持っていたゴムは麻陽にヒョイと奪われた。 「……ナカに出して……」  言葉と共に、ゴムはベッドの外へと放り投げられる。  それと同時。  小鳥遊はぐるりと体勢を変えて麻陽を押し倒すと、一気に奥まで突き上げた。  

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