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第18話
心配だな、とレクスは思っていた。
森の中を駆けて獲物を探しながら、頭の中はルカのことでいっぱいだ。
ずっと昔から一緒にいた。ルカの泣き顔なんてたくさん見てきたけれど、あんなに辛そうな涙を流す姿は初めて見た。
(グラン様と何があったかわからないけれど、あのルカが家出するなんてなぁ)
あのファザコンのルカがそんなことをするなんて少し考えにくい。何か別の原因があるんじゃないかと疑ってしまう。
とはいえ、ルカの家の事情なんてまったく知らないわけだから、あまり詮索するのも良くないと思い、考えるのをやめて狩りに集中した。
しっかり食事を摂らせて、ゆっくり休ませればすぐ元気になるだろう。今は自分がルカのそばにいてやらないと。
(ったく、手のかかる親友様だな)
子鹿の影を目の端に捉えたレクスは、土を抉るようにして方向を変えて獲物の背中に飛びかかった。
◇◇◇
巣に戻ったグランはもぬけの殻の寝床を見て絶句していた。
ルカの姿がない。どこにも見当たらない。こんなこと、今まで一緒に暮らしてきて一度もなかった。
ルカが家出をするなんて考えられない。しかも、あんなに辛そうな時にわざわざ出て行くなんて誰が想像できただろうか。
「何があった……?」
きっと自分がいない間に、この家を出て行くことを決心させるような出来事があったはずだ。
グランは家を飛び出し、ルカの姿を探しながらそれを考え続けた。
ルカがいないだけでこんなに不安になってしまうなんて。自分の心の弱さに気付かされて、グランは大きくため息をついた。
(――見つけ出して、理由を聞かなければ)
今もどこかで苦しんでいるかもしれない。誰かの家にいるのならそれでいいが、もしどこかで倒れていたら大変だ。
(無事でいてくれ)
ルカは自分が守る。そう心に決めていた。母親に捨てられてぼろぼろになったルカを拾った時からずっと守り続けてきた。
早く見つけ出さなくては。焦る気持ちを必死で抑えつつ、グランはルカの姿を探してまわった。
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