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第24話
ようやく体調が戻ったルカは、レクスと一緒にグランの巣穴へ向かった。やはりひとりでは帰る勇気が出なくて、レクスについてきてもらったのだ。
「大丈夫か、ルカ」
「うん。もうすっかり良くなったから」
「体調もだけど……気持ちのほうは?」
レクスは歩きながらルカのことを気にかけてくれる。本当のところは緊張していたけれど、それを表に出さないようにしてルカは「大丈夫」と答えた。
「ならいいけど、無理するなよ?」
「してないよ。それに、レクスがついてきてくれてるんだもん。大丈夫に決まってる」
「そっか」
そうは言ったものの、洞窟までの距離がひどく遠く感じる。無心になって歩き続けていたが、しばらく寝込んでいたせいか息が上がってしまった。レクスに背中を摩られ、ようやく岩場を乗り切った。
はあはあと荒い呼吸をしながら、グランに会ったらどうするか考える。怒っているだろうか。それとも、心配してくれているだろうか。勝手に家を飛び出したのだから、もうルカのことなんて忘れてクレアと一緒に過ごしているのかもしれない。もしそうだとしたら、すごく辛いことだ。
(……考えても、仕方ないよな)
グランがどんなふうに思ったか、それはやはり会ってみないことにはわからない。巣穴にしていた洞窟までもうすぐだ。どんな顔をすればいいかもわからないけれど、ルカは一歩一歩踏みしめながら進んでいった。
岩場を越えたら洞窟の入り口が見えてきた。もう少しで辿り着く。もう少しで、グランに会える。
「ドキドキしてきた……」
「大丈夫だよ、グラン様ってお前にはめちゃくちゃ甘いから」
「そう、なの?」
そうだよ、とレクスが笑う。みんなにはそう思われていたのか、とルカは少し恥ずかしくなる。大人になったつもりだけど、グランにとっていつまでもルカは子どもなのだろう。
――ちゃんと大人として見てほしいのに。
胸元でぎゅっと小さく拳を握って、ルカは悲しげな表情を浮かべた。
あともう少しで洞窟の入り口だ。無意識に早足になってしまって、レクスに後ろから「そう焦るなよ」と背中を叩かれた。
そんな時、ふわりと心が落ち着く匂いが漂ってきた。これは、グランの匂いだ。いつもあたたかな愛情で包んでくれた、グランの匂い。
(パパ……!)
ルカがそう思うと同時に、洞窟の中から慌てたようにグランが飛び出してきた。
「……っ!」
グランの金色の目がルカを捉える。驚いた表情で、身動きがとれなくなっているようだった。それはルカも同じでお互いに距離を取ったまま硬直していた。
何か言わなくては。急にいなくなったことを謝らなければ。
そう思っていても、言葉にならない。
緊張した空気を察して、レクスは静かにふたりを見守った。
「あ……えっと……」
「ルカ」
自分の名前を呼んだグランのほうを見ると、今まで見たことのないような複雑な表情をするグランがそこにいた。
「ルカ……!!」
もう一度、今度は大きな声で名前を呼ばれた。いろいろな感情が混ざった声に、ルカは目を見開く。するとグランはルカへと駆け寄ってきて、ルカの細い身体を大きな身体で抱きしめた。
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