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第33話

 それからルカとグランはごろごろと寝床で一日を過ごし、気がつけばもう夜になっていた。  きらきらの星が空一面に広がる中、細く弓形になった月が眩しく夜の森を照らしている。 「わぁ」  少し身体を動かそうと洞窟から出てきたルカは、目の前に広がる空を見てため息をついた。とても綺麗な夜空をまだ寝床にいるグランにも見せたい。そう思って振り向いた瞬間、がっしりした体躯にぶつかってしまった。 「いい夜だな」 「グラ、ン」  まだグランの名を呼び慣れない。名前を呼ぶたびにドキドキしてしまって言葉に詰まるのだ。だが、グランはそんなこと気にもせず、一生懸命名を呼んでくれるルカが愛おしく思えて仕方がなかった。 「ルカ」  静かに名を呼ばれ、腕を引かれたと思ったら唇が重なった。思わず目を閉じ、その唇を受け入れると何もかも忘れて蕩けてしまいそうになる。 (グランの口……あつい……)  口を開くと舌が滑り込んできて、ルカの口の中を肉厚な舌がぬるぬると愛撫した。気持ちよくてたまらない。このままずっとキスをしていたいと願ってしまうほど、幸せだった。 「んん……ふ」  グランの愛情を直に感じ取って、ルカは腰が砕けてしまいそうになった。頬に手を重ねられ、優しく撫でられると嬉しくて泣きそうになる。  ずっとずっと泣いてばかりだから、もう泣き顔なんて見せたくないのに。  ルカは薄く目を開けてグランの表情をこっそりうかがった。目の前には、夢中になって舌を絡めるグランがいて、心臓がどくんと跳ねた。 (わあ、わああ……近い)  グランがかっこいいことは知っているはず。グランの雄々しい姿にルカはずっと惹かれていた。けれど、一度交わってしまったらその思いはどんどん膨れ上がって。長いまつ毛を目にしただけで赤面してしまうほどになっていた。 「……ん?」  ルカの様子がおかしいことに気づいたグランは、すっと目を開けて少しだけ首を傾げた。 「口づけの最中に盗み見か?」 「え、えとっ、えっと……!」 「いたずらっ子め」  くすくす笑って額に口づける。その感触に、ルカは「ひゃう」と声を漏らして目を閉じた。その反応が面白かったのか、グランは何度もキスをしてくる。額だけじゃなくて、頬や鼻先、唇は軽く啄むように。  戯れのキスに翻弄されていると、背後から冷たく切りつけるような声が聞こえてきた。

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