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第3話

「ん……ぁ、ひでひこぉ…?」 「お前ね、勝手に人のベッド潜り込むんじゃないよ」 「いいじゃんよ、別に減るもんじゃねーし」 ふあー、と大きく伸びをして起き上がると、傍に座る秀彦の首に掛かるタオルを引き抜いた。 ガシガシと髪の水分を吸収してやり、指先で撫で付けて流れを整えてやる。 「よし、カッコいい!」 「…っ!な、に…」 「なあなあ、それよりテスト!今日いきなり返って来たんだぜ!見ろ!」 予期せぬ褒め言葉で頬に熱の集まる秀彦を知ってか知らずか、ばっとベッドから飛び降りると、ドアの前で裏返ったままの答案用紙を握りしめる。再びベッドの上に座り込むと、じゃーん!と自分で効果音をつけて秀彦の顔の前に広げた。 赤ペンで所々にチェックが付いているものの、丸の方が断然多い。 右上に記入された数字は89。 「…へえ、なかなかいいじゃん」 「じゃなくてっ!約束!覚えてんだろ?」 秀彦のシャツの襟首を掴んで、グッと詰め寄る雄介。鼻と鼻が触れ合いそうなくらいにまで近くに寄り、じっと見つめる。 何も言わない秀彦を不審に思った時、雄介の後頭部に秀彦の掌が添えられた。 「え、なに……ンっ!」 あ、と思った頃には、ぬるりとした温かいものが雄介の舌を捕らえていた。 強い力で抑えられているわけでもないし、突き返そうとすれば出来る。でも、出来ない。一瞬のうちに体から力が抜けていくのを感じながら、唇の隙間から必死に酸素を取り入れる事で精一杯だった。 気付けばシャツを握っていた掌は、秀彦の指としっかり絡んでいて。 ゆっくりとそこを解放されると、回らない頭で今起きた事を考えて、かああっと顔が熱くなる。それを見られたくなくて秀彦の肩口に額を擦り付けるように埋めると、ぽんぽんと頭を撫でる秀彦の掌。 「テスト頑張ったご褒美。もっといるか?」 「………いる」

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