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「おま…んで、バキバキなんだよ」
知徳と同じように滾ってきているせいか、勝手に息が上がる。
そのせいで途切れてしまう言葉遣いを怪しまれないかと内心で焦りつつ、思いがけず見た後輩の、厳つい肉体に抱いた疑問を投げ掛けた。
「おれ、学生時代にバスケやってたから…その筋肉をムダ肉にすんなって、ねぇちゃんに言われてて」
筋肉は放っておくと、すぐ脂肪に変わってしまう。
『ビジュアル重視で自慢の弟の腹が、贅肉でタプタプなんて、絶対いやよ』
…幼い頃から姉の尻に敷かれ、姉の言うことを聞かないとゲンコツを飛ばされ続けてきた知徳は、絶対君主然として命令される言葉に、逆らう権利などなかった。
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