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第3話
「これデカすぎるよー」
シャワーから出るなり文句だ。人の用意してやった着替えに対して。下着は袋に入ったままのだし、あとはTシャツにハーフパンツだ。不満を言われる筋合いがない。
「ケチつけんなら着んな」
「上は良いけど、下がズリ落ちてくんだよ」
「腰のヒモ縛っときゃいいだろ」
「でもパンツが落ちんの!」
「うるせぇな。じゃあノーパンでいろ」
俺だって一刻も早く汗を流したいんだ。これ以上ガキの相手をしていられない。
浴室のドアを閉めて服を脱いでいると「──見ていー?」と聞こえてきた。
「テレビなんか勝手に観てろ」そう答えて蛇口を捻る。熱いお湯を頭から浴びて生き返った気分だ。体がさっぱりすると、やましい気分も一緒に洗い流されてった。
出たらビール呑んで寝ちまおう。
家出か自分探しか知らないが、たまには宿に困った未成年を一泊させてやる……だなんて、善い人役でも演 ってやるよ。
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