5 / 9

第5話

セミダブルのベッドに海袮(あまね)の体をドサッと落とす。俺が手を離しても首にしがみついて離れない。 「おい、ちょっと離れろ」 俺は舌打ちした。 これじゃ顔も見れねぇ。 海袮は必死でナマケモノのように俺の首にぶら下がる。それなら──それでいい。下半身がガラ空きだ。手だけ伸ばして股間を揉み込んでやった。 「は、あ──うぁ……っ」 「すげえな、ガッチガチじゃん」 若いなーという言葉はかろうじて飲み込んだ。 「なに考えてこんなになってんだよ。あ、あれかー。さっきのAV、そんなにきた?」 「やっ、秋良っ、はな、して……」 ──早くひん剥いて辱めてやりてえ。 あんな動画ちょっとで、これだけ興奮してフル勃起してんだ。頭ん中えろいことで一杯でなんも考えらんねーだろ。その期待にいくらでも応えてやるよ。俺の遣り方でだけどな。 焦らすように、ハーフパンツの上から人差し指で裏筋を竿の付け根から先端までをなぞる。 ようやく首から腕を離した海袮が、今度は俺の手を退けるような動きを見せた。 「なーにやってんだよ」 「うぅ、ッ、はー、ぁ。……っだっ……て」 そこで黙るので、布地に形を浮き出すように手のひら全体で撫で回す。 邪魔をする手は一纏めにして胸の所で押さえ込んだ。 「んんぅ、っふ……あ、……っ」 「あれ?お前これ……ホントにパンツ脱いだの」 やけに感触がリアルだと思ったらノーパンだった。ハーフパンツに凄い勢いで染みが広がっていくのが見える。 「あ、あっ、あっ、ダメ、ダメいくからだめ。秋良っ、やだ、触んなっ……!」 「あぶね」 言われて手を引く。まだいかせるつもりはない。 「服、脱ぐかー」 海袮を手伝い、上も下も裸に剥く。手伝ったというより、抵抗しようとするのを封じ込めた、の方が正確か。 俺は脱がない。その方が海袮には恥ずかしいだろうから。 「はい。海袮だけ全裸のできあがりー」 「なんで……秋良はそんな、意地悪なんだよ」 そんなのお前が嫌がる顔が、かわいいからに決まっている。 「えーなんでかなー。おれ意地悪い?」 「──すげえ悪い」 「なら優しいとこも見せてやろうか。して欲しいこと言えよ」 言わせる時点で意地悪じゃん……と文句を言うのを無視すると、目の端を少し紅くして俺を見た。何か思い付いたようだ。 「──……して」 「あ?なんて?」 「キス、して欲し……」 少し意外だった。いちおう遠慮はしてた、これでもな。 「そんなの、俺としちゃっていいの」 「秋良と……したい」 ウブな割にはドライだな。ファーストキスってワケじゃないなら、別に特別でもないか。単にキスが好きなのかもしれない。欲しいなら、たっぷりしてやるのもいい。 海袮の上に覆い被さり、顔を覗き込む。顎を持ち上げると緊張と期待のこもった目で見返してくる。感情がストレートで分かりやすい。つい笑みがこぼれる。 ──けど、まだやらねえよ。 唇に親指を当てて、やわく押す。プニプニとした感触を楽しんで縁をなぞる。海袮の口がポカンと開いていく。こんな所を人に触れられることが、そうそうはない。その行為自体に放心しているみたいだ。 無防備なくせに敏感な海袮は見るからに危なっかしい。身体を思い切り抱きしめて優しく唇を合わせてやってもいいが、まだ駄目だ。 このヒナ鳥みたいな海袮を慈しむどころか、俺は汚して穢したいと思っている。だから、もっと溺れるくらいに快楽を与えてやる──。 恍惚とした瞳を見せる海袮の口の中に、強引な仕草で親指を突っ込んだ。そのままを舌を押しつぶす。 「……っ、は……ぅ?」 目を見開いて驚いているが、されるがままで抵抗はなかった。 「もっと口開けろ」 「ふひ?」 「そ。開けろよ」 海袮は戸惑ったように、それでも素直に言うことをきいた。この場合、どの程度あけたかは問題じゃない。重要なのは態度だった。海袮の従順さは俺の欲望を満足させた。 親指を抜いて、中指と人差し指を突っ込む。二本の指の間に舌を挟むとムニムニと擦り合わせるように揉んだ。 「ん、っむぅ、ふ……ッぅ」 喉の奥で言葉にならない喘ぎを上げて、海袮の手が俺の腕に触れる。引き剥がすつもりはないらしい。 開いている片手で頬を覆って少し角度を付けると、指を差し込んだまま海袮の唇の端に舌を這わせた。そのまま隙間から口の中へ侵入する。 応用編から入ったがキスには変わりない。指で自由を奪ったまま海袮の舌をベロリと舐める。 「う、んぅ、んんっ──」 海袮もキスだと認識したのか、鼻に掛かった甘い声を出した。ねだるように唇と舌で指をしゃぶってくる。俺も思うさま唇を貪りたかったが、もう少し我慢だ。 舌から指を離し上顎の裏、窪んだ所に当てて撫でる。 「この場所、気持ちいいだろ。フェラする時ここ使えよ」 させるかどうか分からないが予備知識と想像させて煽るためにそう言う。しばらく指で擦っていると気持ちよさが分かってきたのか目がトロンとしだす。 「──秋良ぁ……」 だが、いつまで経っても欲しいものが与えてもらえないのが不満らしく、海袮が焦れた声を上げた。 分かってる。ちゃんとしてやるって。メロメロになるような甘いやつが欲しいんだろ。 体を起こし海袮を真上から見つめる。額に手を当て前髪を後頭部へ流すように撫でつけた。そのまま頭を固定してゆっくりと唇を重ねていく。 それだけで海袮は堪らなくなったように切なそうな吐息を漏らし、俺の首に腕を巻き付けた。 小さな音を立て何度も何度もキスを繰り返す。さっきの指導の成果か、ごく自然に口を開く。 素で誘ってくるとか、えろい奴。 望み通りに入り込んで舌を押し付けてやった。 「ふ、んふッ、は……ぁ、む……」 待てを解かれた犬のように、海袮が夢中で吸い付いてくる。その熱意に応えて思う存分、絡め合った。 擦り合うように舐め合い、引き出したところを甘噛みする。引っ込めようとするのを許さずに強く吸って、逆に自分の口の中に引き入れた。飴玉を舐めるように、そのまましゃぶる。 「んん、んぅ、あ、きら……秋良ぁ……」 キスの合間に上げる海袮の声が感じまくっている。体もビクビクしっ放しで、背が反り返りシーツから浮いた。 俺があえて多く流し込んだ唾液が当然、飲み込みきれずに口元を濡らしている。 すっげー感じてるみてえだけど、もういいだろ──。 少ししつこくしすぎたか、と思うくらいには長い間キスしていた。唇を離して親指で、潤いすぎた艶めきを拭ってやる。──要は涎でベタベタで見てられなかっただけだ。 指が離れたか離れないかのタイミングで海袮の腕が、グイッと俺の頭を引き寄せる。 「……やだ──もっと……」 「は?」 嘘だろ。足んねーのかよ?生意気にも俺を引っ張りやがって。 肘をついて顔を覗き込む。唇が触れるギリギリの所で海袮に言う。 「おまえ欲張りって言われねぇ?」 「言われねえよ。そんなこと」 もどかしそうに海袮は尚も腕に力を込めるが、同じ手を何度も喰らうか。そのままの距離を保ちさらに言う。 「して欲しい?」 「うん──」 俺は口の端だけで笑う。自分に向かってだ。 今夜だけで俺は何回こいつを無茶苦茶にしたくなんだろーな。 強引に顎を押し上げ顔を上向かせる。 「口ひらけ」 海袮の口が薄く開きかけたところに、上半身に体重をかけて覆い被さるように口付けた。 深く唇を重ね合い、さっき教えてやったポイントを何度も舌で愛撫する。 「む、ぅ………ふっ、う、ん──」 首からずり落ちた腕が、すがるように俺の肩に爪を立てる。 はー。キスだけでこれだもんな。大した、えろガキじゃねーか。 俺は欲望に忠実な奴が大好きなんだよ。 その点だけでも、超好みのタイプ──参るよなー……。

ともだちにシェアしよう!