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第6話

唇を合わせたまま厚みのない体に手を這わせる。手のひらを押し付けるように辿っていく。 降りていくにつれ海袮(あまね)が何かを期待するような、湿った吐息を吐き出した。 そのまま胸に到達すると、小さな膨らみが精一杯たちあがって自己主張している。摘めるほどに固く立っているそこを見逃す手はない。 「あ、あ、っ、う──」 少し手が当たっただけで切羽詰った声を出す。 ここも感じんのか。えっろ──。 両手を使って同時にこねると、こっちが驚くような嬌声を上げた。 「ふあ、や、や、あ、あー……ダメそこ、おれ弱いから、ヘンになるからっ──」 「ふうん。乳首そんなに感じんだ。やらしーな」 それにしても、敏感すぎじゃねえか。どう考えても開発済みだろ。性感帯って自分で分かってるし、勝手に未経験だと思ってたわ。 「おまえセックスしたことあんの?」 しかしその問いに、海袮は大きく横に首を振った。 「ねえっ、ねえよ。誰とも、やったことなんてない」 「へーえ?」 まあそう言うならそれでいい。俺としてはどっちでもいいんだし。 「信じてない?……嘘じゃねえよ。ホントだよ、信じて秋良」 「お、おお……」 あまりの真剣さに一瞬、手が止まった。 なんだ、そんなムキになりやがって。まるで俺を好きみたいな反応じゃねえか。 「なんか必要以上に強調してんな?もしかして俺に一目惚れでもした?」 「………っ」 オイオイそこで黙るなよ。本気っぽいぞ。 「……そっ、そうだよ。……一目惚れだったんだよ。おれ秋良が好きなの!」 はあ、そう来たか。かっわいーなぁ、おい。 初めての経験に頭が追い付いてないんだろう。そんでたぶん吊り橋効果で感情が勘違いしてる。 今は無理に否定してやることもねえな。その方が絶対、気持ちよさが倍増するはずだから。 「そっかそっかー。俺もだよ。ところでさぁ──」 言葉を切って片方の乳首を口に含んだ。もう一方を指でつまみ上げる。短い悲鳴を上げて海袮の体が反り返った。 「これ感度よすぎだろ。オナるとき自分で弄ってる?」 経験が無いならそういうことだと確信があったが、答えさせるためにあえて訊く。 「そんっ……な、こと……っ」 「正直に言わないと、もう触ってやんねーよ」 「──ちょっと、だけ……触るときも、ある……っ、ふ、あ、あ──」 答えられたご褒美に少し強めに舌で転がしてやる。グミのように弾力があり、開発の甲斐あってほど良く大きさのある粒に育っている。その感触が良くて口に入れているだけで気持ちがいい。 唇で挟み込んでその先をチロチロを舐めると、海袮は耐えるように体を強張らせて息を詰めた。 「んーっ、ん、んんぅ……ぅ、だ、めだってー……」 「でも気持ちいいんだろ」 俺はさっきの回答に不満がある。正直に、とは言い難かった。だからもう少し問い詰める。 「じゃあさー。舌で舐めんのと指でこねられんの、どっちがいいんだよ」 「は、んぅ……こっ、こっち……」 触っている手の方を指差す。 「言葉で言えっつってんだろー」 「っ──指のがいい……」 刺激が強い方が感じるってことか。そんなら──。 舐めるのを止め、前歯で先端を噛んだ。つまんだ指の方も力を込めて伸びるくらいに引っ張り上げた。 「う、あ──ん、ん、んっ……!やだ、秋良、やだって、ダメそれ、出ちゃうー」 「はあ?お前まさか胸だけでいくの?」 「──だ、から……弱い、って……ふ、う、うぅ」 「我慢しろよ。いったら辛いのお前だからな」 口ではそう言ったが胸だけでいけるなら、いかせてみたい。そのままネチネチと乳首を弄り倒していく。 親指と人差指で挟み込んで、捻るようにこねると海袮の息がどんどん荒くなっていく。やっぱり強い刺激の方がより感じやすい。 ──もっと酷く苛めてやりてえ。こいつ……どこまで堪えんだろうな。 顔を見つめると海袮は涙目で首を振った。言葉も出せないようだ。 下半身に目をやると、もう出たんじゃないかと思うくらいに濡れている。丸い膨らみを作るしずくには、白い液体が混じっていた。 これ、マジでいくんじゃねぇの。 両方をつまみ上げてから、先端を爪で引っ掻いて往復させる。仕上げに深く唇を重ねて舌を吸い上げた。 「んんん、ぅ、うー……ッ!」 「勝手にいくんじゃねーぞ」 駄々っ子のように頭を振った海袮が、俺の両手首を強く握りしめる。そのまま腰が震え、本当に触れもせずに達した。 「あー、いっちゃったなあ?我慢しろっつったろ。やーらしい身体」 「ふ、あ、……」 ぐったり脱力した海袮の腹の上で、出したばかりの精液を弄ぶように塗り広げる。 「やだ……気持ち、悪りい」 「自分のじゃねえか」 「自分のだからじゃん──」 嫌そうにしている顔が堪んねえ。 にやけそうになるのを我慢しながら、無言でティッシュを渡してやる。 横になったまま腹を擦る海袮が上目遣いで俺を見た。 「秋良って──」 なんだよ文句か?後にしろよ。こっちは全然足りてねーんだからな。 「なに」 不機嫌な声で答えると何故か顔を赤らめる。 「格好いい──よね」 「ああ──そう?」 そう言われることには慣れているが、この場面でか。酷いことされてるって自覚は全くねえのか。これじゃ俺のオモチャだぞ。 ──どっかで痛え目に遭いそうだな。 正体不明の男に、あっさりと(なつ)く海袮に不安を覚える。 憐憫(れんびん)の視線をどう取ったのか、また「えへへ」と言って丸めたティッシュを差し出してくる。 ……やっぱ、ひっぱたきてぇな。 ティッシュをひったくり床に放り投げると、自分の着ている服を脱ぎ捨てた。 高校生と同じというわけにはいかないが、大した運動もしてない割には筋肉が落ちてない。ハードな業務のせいで贅肉もつくヒマがなかった。現役といえど華奢といえる海袮よりは、よっぽど体育会系の体型だ。 「……ッ」 俺の裸に海袮は息を呑んで凝視した。視線が上半身からおずおずと下りてゆき、腰でピタリと止まる。 「──おっきい……」 独り言だろうが、呟かれた言葉がいやに艶めかしく響いた。何を想像したのか分かるほどに。 「もちろん、終わりだなんて思ってねえよな」 「う──うん……」 海袮の首を掴んで、目の前に股間を突きつける。至近距離で見せられて、乱れた海袮の吐息が掛かった。 こんなことをされても海袮に嫌悪する様子は微塵も見えない。むしろうっとりして頬ずりでも始めそうだ。 考えたんだろ、これがぶち込まれるトコ。──見せろよ、もっと。全部見てえんだよ。感じまくって泣き出す顔や、ドロドロにやらしく乱れた身体をさぁ。 ああそうだった。昔っからこうだ。性癖ってのはそう簡単に変わんねえな。そんな自分に自嘲する。 別にどっちでも良かった。 けどこんな期待に満ちた顔されたんじゃ、応えねえわけにはいかねーだろ。 俺は海袮の前髪を持って顔を上げさせる。 「(くわ)えろよ」

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