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第8話

「ほら後ろ向け。お前が楽だから」 「──やだ。秋良の顔見ながらがいい……」 どこまでも甘ったれてんなぁ。 「キツくても知らねえぞ」 さっき奪った枕を海袮(あまね)の下に敷き、腰を高く抱え上げる。両手で孔を広げるとヒクヒクして俺を誘う。 「うーわ、やらし。──息吐けよ」 俺の方も興奮で充血した先を孔に当てる。力を入れて押し当てると、ゆっくり開いて飲み込み始める。それでも指とは違ってすんなり、とはいかない。開きはしたが閉じようとする威力がすごくて、亀頭をギュウギュウ締め付けてくる。 「あっ、んっ、キツ……きつい、ああぁっ、秋良……っ」 「馬鹿、こっちだって、キツいんだよ。力、抜け──痛てえって」 さすがに一気には挿れられないので、先端が収まったところで一旦止まる。 海袮の息が整ってから軽く抜き差しをすると、急に体を弓なりに反らせて激しく喘いだ。 「あ、あ、あ……ん、ふ、……うぅー!!」 今のでいったのかと思って下半身を見るが、トロトロと透明な液を垂れ流しているが屹立したままだ。 ……そーいうことかよ。くっそ、あーもう。すっげえやらしい。 「お前メスイキしたろ」 「っ、っはー。あ、……っかんない……ジワジワって……痺れて……も、よく分かんない……」 「見ろよ、精子でてねーだろ」 「ほんと……なに、こ……や、あ……やぁ、動く、なよ……っまたっ──ん、んぅ」 早くも海袮の身体はいきっぱなしの状態になってるんだろう。少し強く前立腺に押し当ててやるだけで、あっさり二回目もいく。 簡単に中イキしやがって。 もっと何度もいかせて、俺がいないといけない身体にしてやろうか。 快感の連続で海袮は体の力が抜けてしまっている。ぼんやりしているのを幸いに、体重を掛けて腰を沈めた。 「ふ、あー、っ、あ、んぅ」 メリメリと閉じている肉壁を掻き分けながら侵略していく感覚に、全身がゾクゾクする。 入る所まで収めると海袮の両足を肩に掛ける。上半身を倒すと海袮は脱力しながらも両手を上げ、すがってこようとした。 そんな海袮にどうしようもなく嗜虐心が湧く。 俺はその手を受け入れず、逆にベッドに押さえ付けて自由を奪った。 ──もっと、俺を欲しがれよ。やらねえから。 「あ、なんで、やだ、秋良ぁ──」 海袮はきっと抱きしめて欲しいんだろう。その期待には応えない。 身体を押さえ込んだまま腰を前後に律動させる。 「ふ……ぅん……ふー、うー……っ」 見下ろす俺の下で揺さぶられ喘ぐ海袮は、(おれ)に捧げられた人身御供(ひとみごくう)のように健気でいたましい。 それを穢している──昏くて重苦しい快感が俺の全身を覆う。 これでもなんとかこらえているが、本音を言えばもっと後先を考えずに乱暴に腰を突き動かして、無茶苦茶にしてしまいたい。 抑える代わりに動作に重みを与える。だがそれはじっくり甚振(いたぶ)るような遣り方で、もしかしたらこっちの方が、される側には辛いかもしれない。 「う、あ……っ、やあ、は、ああっ……」 犯す。という言葉に相応しい行為だ。肉体的にも精神的にも。海袮は不安そうな目で俺を見つめている。 その目が俺の征服欲を満たす。 くそ、まじで手放したくなくなりそうだ。なんだってこいつは俺に、こんな好き勝手させんだよ。 本気で嫌がろうと思えばできるはずだ。 閉じようとする体の内側を犯しながら何度も抽送を繰り返した。そうすることで強引にほぐされる海袮の内壁はトロトロになっていく。 「……は。気持ちい」 ──なんだよ。やべぇってコレ。 満たされるのは感情だけじゃない。海袮の身体が内側から俺を求めてるみたいだ。こっちが竿をこすり付けるのに合わせるかのように、中が絡みつきしぼり取りにくる。 「ふ、は……ぁ、秋良、秋良ぁ……」 明らかに海袮も感じている。瞳からの涙は止まらず、声もとろけるように甘い。 「きもち、ぃ……っ、俺っ……初めて、なの、に──んで、んな、きもちーの……っ」 身体が揺らされているので、言葉が波間から聞こえるように途切れ途切れだ。 んな無理して喋んなよ。快感だけ追ってろって。舌噛むぞ。 海袮が甘ったるい言葉を期待しているのは分かる。だが俺は現実的だ。 「しちゃいけねーこと、してるから、気持ちいんだよ。──どうせお前ら、保体の授業でギャーピー言ってるレベルだろ。それがいきなり父親くらいの歳の男とセックスだ。非常識すぎて、そりゃアドレナリンもドバドバ出んだろ」 「秋良は……っ、親父より、若い……っん!は、ぁ」 まだ喋ろうとするので、思い切り突いてやった。 「──馬っ鹿。そういうこと言ってんじゃねーよ」 「秋良、手ぇ……離し、て……触りたい」 「んー?駄目」 素っ気なくそう答える。 「や、なん、で……ぇ」 そうやって悶えてるとこが見てぇんだよ俺は。 一度大きく身を引くと、ズブズブと奥深くまで突き入れて止まる。 「はぁ、あ、っやっ、あ、おくっ、ふかッ………くるし、っ」 「つってもなー、全部入りきってねえぞ。おまえ浅いのか」 「……っんなの、しらね……。秋良がでか、すぎんだ、よ……っ」 「はっ、それ褒めてんの。なー、これもっと奥いけるぞ。挿れてやろーか」 ぐっと腰を入れると行き詰った壁に押し返される。だが腸は管なんだから、押し込めばこの先にも挿れられる。 「──無理!ほんと……ダメ、ムリだからーぁ……っ」 泣き声になったのでさすがに止めてやる。痛がられても萎える。 「じゃあ、もういけ」 再び抽送を開始する。短く荒い息だけで、海袮があえぐ。俺は片手を離してち○こに手を伸ばした。ぐっしょり濡れた体液を潤滑油にして上下にしごく。 「うぅっ、は、……んなの、すぐいく、でちゃう、ダメだよ……っ」 「いけよ」 そのために擦ってんだ。ただでさえキツいのにうねりながら絞られて、俺だってギリギリなんだよ。 「ふー、っふー……ぅ、あきらぁ、すき、すきー……」 開放された手で俺の腕に触れてくる。 これだけ身勝手に身体を使われて、まだ恋慕がつのるのか。もういきそうで感極まってんのか。 無意識に言ってるなら天然のたらしの素質が十分だな。最中にこんなことを言われりゃ、落ちるやつならイチコロだろ。 ベッドの上の戯言(ざれごと)と分かっていても、つい愛しいと思ってしまう。 「秋良ぁ、あきらもいって。好きって、言って」 んとにさあ、どこまで甘えたがりなんだよ。 俺が言うと命令だが、こいつが言うとおねだりだ。しょーがねえなと苦笑する。 「──あぁ好き。好きだよ」 「あきらぁ……」 もうずっと特定の人間と関係を結んでいない。言葉にしたのは、いつ以来だ。 縫い止めていた手を離して上半身を深く倒すと、その手で頬を包みキスをした。一瞬の隙も逃さずに、海袮が下から抱きついてくる。俺が前に倒れたことで、結合が深くなり圧迫も相当だろう。それでも海袮は腕をほどかない。 キスをしたまま、さらにしごいて追い込みをかける。海袮は苦しそうに息を切らせた。そして俺の目を見つめる。 「っく……あ、ああ、秋良っ、は、ぁ、ううぅ……秋良ぁ、もうでる、だめ……いく──……っ」 見ているだけで、海袮の全身で感じている快感が、そのまま俺にも伝播した。こんなにシンクロすることも滅多にない。 海袮が射精したのとほとんど同時に全身の毛穴が開く感じがして、ブチまけるように放っていた。

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