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3.「よかった。反応、してくれた」
婚約者の自室でもなく客室でもなく、なぜか公爵御当主の部屋のとびきり大きなベッドに導かれる。薄絹一枚だけを纏うノエ様が、既にその上で待っている。
二人向かい合い、正座を崩してペッタリと座る。羞恥と風呂上がりで火照った肌に、冷えたシーツが心地良い。
僕の付添人のセバスティアノ夫人と王都邸の年輩の侍女たちに、まるっと全部ピッカピカに磨きたてられた。いつもの外側も、初めて体の内側まで。
ちょっとビックリした。慣れろ、僕!
「マリアくん……いいかな?」
重たげな伝統織りの天蓋の内は、煌々と照らすランプが数多置かれている。恥ずかしくても隠れる影はなく、雰囲気の欠片もない。
でも、座学のみのノエ様と耳年増なだけの僕。ムードを優先して暗がりで初めてコトに及ぶなんて、流ケツ事故不可避だ。痛いのは絶対嫌だよ。
黙ってうなずくと、ノエ様は体を傾け唇だけを僕に寄せる。チュッというわかりやすい音と、今の僕と同じ薔薇香がふわりと漂う。同じ石鹸の香り。
夫夫になるって、匂いも一緒になることなのかも。
……なーんて、ぼーっとしていたら、ぬるりと熱い何かが口の中に。
舌だ!
わあっと一瞬だけ思ったけれど、不快じゃない。同じ、味。さっき夫人が僕の口に含ませた甘いミントの香り玉。
むしろドキドキして、こんにちはと迎えるように僕の舌でノックする。
「んっ……ふぁ……ん」
手を取りあうように舌先を絡めあう。いつしか二人ともシーツに両手をつき上体を支え、深いキスに必死で夢中になっていた。
「ぁむ……んむっ……ぁぅ……ん……」
「よかった。反応、してくれた」
息が切れて離れた二人の間には、いやらしく繋ぐ透明な粘液と、ノエ様の嬉しそうな声。
「は? えっ、うわっ!」
慌てておちんちんを隠そうとした。でも、ぴょこんと元気に上向くそれは、両手では覆いきれない。いつの間にか、リボン一つで留まっていた僕の夜着は解かれ、ベッドの下に。
恥ずかしい。全力で恥ずかしいけれど、僕もホッとした。男同士でもできそうで、嬉しい。
ノエ様は?
お揃いになっていた蔦柄の刺繍リボンを、僕も優しく引く。ハラリ、絹布がノエ様の膝に落ちる。
「は? ええっ、うそ……ごめんなさい」
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