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4.「待って、大きい……壊れちゃう」

 思わず謝ってしまったのは、露わになった上半身があまりにも美しいから。そこには、精巧な彫刻がいた。  同学年で従兄弟にあたるキラッキラッ王太子殿下に比べて地味なお顔立ちだからといって、ノエ様はそこそこの僕とお似合いだなんて図々しく思っていて、ほんとごめんなさい。  ふっくらと曲線を描く大胸筋。腹筋は隆々と割れ、谷に影を落としている。肩も腕もムキムキではないのに、程良く引き締まり力強い。艶やかにくびれた腰回りと、形の良いおへそ。 「……マリア……くん?」  僕の意思とは無関係に、ゴクリと喉が鳴る。触りたい。  毎日必ず基礎と剣術の鍛錬を欠かさないというお話は、聞いていた。まだ王都学園生なのに既に騎竜を乗りこなせるとも、確か言っていたよね……なら、太腿もスゴイ?  膝上に溜まった一枚に、僕は手を伸ばす。ノエ様の了承も得ずに、隠している邪魔ものを奪い取る。 「は? えええっ、待って、無理だよ! 待って、大きい……壊れちゃう」  知らず知らず、ベッドの端までずり下がっていた。なのに、目は釘付けになってしまう。輝かしい金の下生えに縁取られたモノが、肉肉しくそそり勃っている。穏やかなノエ様に似合わないほど野蛮に。  コレが、僕のおしりに?  いや、本当に待って。コレは僕の二倍はあるんじゃないか? 自慢じゃなく事実として、僕のおちんちんだって大きさには自信がある。  伯爵家同士は独自の繋がりがあって、夏はその子息たちと領地の湖で泳ぎ回ったり、風呂を共にしていた。学園入学する前までの比較では……  遺伝か? 公爵の遺伝なのか?  現王の弟でノエ様のお父上の公爵は、史上稀にみる艶福家のイケオジサマだ。王家の諜報機関すら愛妾や庶子の数を把握できない、と噂されるほど。  ノエ様は公爵家の末っ子だと認識されている。それは、公爵領から一切出ない第一夫人を母とする兄弟姉妹の明確な末子だからで…… 「やはり、無理……だろうか……」  とても、とても悲しいお顔。現実逃避でぐるぐる思考の渦にはまる内に、僕はノエ様を傷つけてしまっていた。

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