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第17話

______ ______ 「あっ…………!?」 思わず、スメンクカーラーは声をあげて足を止めてしまった。 引き続き、三人でピラミッド内を進んで行く最中に何かを踏んでしまったせいだ。足を退かしてみると、トゲのような形状が目を引く丸くて小さいものがひとつ落ちているのが分かった。 スメンクカーラーはそれが【ヒマの実】だということを薄々理解してはいたものの、やはり気になって側にいるツタンカーメンとホセへ尋ねてみようかと目線を向けてみる。 しかし、中々言葉が出てこない。 殆どの時間を共に過ごしていて、ホセに至っては家族も同然ともいえる関係にも関わらず、心の奥底に潜む【本心】が二人に声をかけるというだけの些細な行為を邪魔してくる。 (やはりヒマの実を踏んでしまったことは黙っていよう____その内に次なる目的地についてしまうだろうから……きっとこのまま気付かれないに違いない____) 「おや、如何なされたのですか?スメンクカーラー様、貴方は先程からしきりに唇を舐めておられる。貴方様の幼い頃からの癖でしょう。ですが、隠し事をなされている時だけにそれをなさっていることをこのホセは分かっております。だからといって、貴方様を怒っているわけではないのです。ですが、私に話して下さらないのは……何故なのです?」 しかしながら、スメンクカーラーの予想通りとはいかず、ホセに見抜かれてしまい心臓が口から飛び出しそうなほど驚いてしまった。 「さあ、お話下さいませ……スメンクカーラー様。いったい、貴方様にどのような隠し事があるというのです?」 まるで、この場にツタンカーメンなどいないといわんばかりに此方へ近寄ってくるホセの剣幕にたじろぎつつも「何も隠し事なんてしていない」と誤魔化せないのは、そんなことをしても目の前の相手には決して通じないということを悟ったからだ。 『さっき、そこでヒマの実を踏んでしまったんだ。それだけのことだ……ホセよ、何をそんなに気にしているのだ?』 たった、それだけの言葉だというのに、一心に注がれてくるホセの鋭い視線から逃れることができない。そもそも、あまりの緊張からか口の中がからからに渇ききってしまっていて上手く話せない。 すると____、 「兄上……このヒマの実を踏んでしまったのですね。このヒマの実には毒があるのですから迂闊に踏んではいけないじゃありませんか――我々は先に目的地へと向かいますから、兄上はすぐ右の室にある水場へ行って足を洗って来て下さい。右足に毒の汁がついてますゆえ……」 ツタンカーメンが、先程とはうってかわって明るい声色で話しかけてくれる。それにより、ホセは一瞬だけ真顔になったものの特に何かを言うわけでもなくスメンクカーラーが水場へ行くのを見送るのだった。

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