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第一話 そよ吹く風は、君の匂いがして 3

 ……ダディーが片足を失った。 ルシファー 「ココに、置いテおく…」 ルドルフ 「あぁ、すまぬな。」  持って来たガーゼをルドルフの切断された太腿の下に分厚く敷き、その内の三枚を手に取り消毒液を浸すと優しく患部を消毒した。 ウィリアムの蘇生のために必要だった死神の身体の一部。ダニエルが鎌を構え、その準備を行っていた時だった。ルシファーが見つめるその先でルドルフが自らの足を切り落としたのだ。目を焼くような閃光が部屋に満ち、その光が消えると一人の男が陣の中に立っていた。まだ慣れない目で急いでルドルフの姿を探すルシファーが見つけたのは、大量の血を流し床の上に座り込んでいるルドルフだった。呪文を唱え断面を焼き止血するルドルフの元に駆け寄り、着ていたローブを脱いで彼の太腿に巻き付けた。 あの光景が今でも鮮明にこの目に映り、時よりこの手を止めてしまう。ルドルフから声を掛けられたルシファーはハッと我に返りガーゼをルドルフの太腿に当てた。 ルシファー 「どうシテ、ダディーが切っタ……」 ルドルフ 「わしの責任だからだ。」 ルシファー 「……………。」  思えばあの時からそうだった。ルドルフが足を切った時も、彼が血の海の上に座っている時も、この心は……何と言えばいい?この感情を、人々は何と呼ぶ? ルドルフ 「……そんなに苦しそうな顔をするな、わしは平気だ。」 ルシファー 「……苦シイ……?」  この思いを『苦しい』と表現するらしい。僕は苦しい。とても……苦しいよ、ダディー。

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