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第二話 そなたの帰りを待つ者

御者 「もうじきコバルト橋が見えてきます……目的地はすぐそこです。」  その声を聞き一度深く深呼吸をしたのはジョシュアだった。一行はついに彼の生まれ故郷であり、家族が今でも住まうその屋敷へと辿り着いたのだ。長らく座り続けて痺れた足を今すぐにでも解放したいものだ、クリスは待ち切れぬ様子で足を曲げ伸ばしする。 ミイラ男 「やっとだよ……もうお前ん家遠すぎ。」 ドラキュラ 「……やっぱり戻らない?」 狼男 「……俺も賛成かも……。」  「冗談じゃない」と真顔で首を横に振るクリスに、怖気づいた吸血鬼と狼男の提案は即座に却下されてしまった。 ミイラ男 「帰るなら俺、お前と別れる。」 ドラキュラ 「なっ………!」  これにはさすがのジョシュアもそれ以上は何も言えず観念した。あの裏の組織で有名なターナー家の息子が今や一人の男の子に夢中になり、脅されても何も言い返せずにいるのだから可笑しな話だ。 ミイラ男 「お前のお父さんってそんなに怖い人なの?」 狼男 「……すぐに分かるよ。」  馬車が橋を越えたその時、一瞬ゾクっと背筋に何か寒気のようなものを感じた。一体何だったのか……クリスが首を傾げていると、目の前に座っているウェアが耳を下げガクガクと震え出した。何かに酷く怯えているようだ。 ミイラ男 「ちょ……ウェア?大丈夫?」  心配したクリスがウェアの元へ移動しようとした時、ザックの唸り声が隣から響いた。彼も同じように落ち着きのない様子で外の匂いを嗅いでいる。一体何がどうなっているのだろうか? ドラキュラ 「……全く動物園じゃないんだから、落ち着きなさいよ君達。」  そう言っているジョシュアが一番落ち着きなく貧乏ゆすりをしている。橋を越えた途端に大男三人の様子が豹変したのだ。「大丈夫よ……」子供達を抱きしめてあやすダフィーもとても怯えているように見える。獣人である彼らの反応からして、きっと野生の勘が働いているのだろう。ジョシュアの実家が殺し屋だということはどうやら事実らしい。 その時、馬車が今までにない揺れ方をした。急いで小窓から御者の様子を確認すると、馬が激しく暴れている。御者が立ち上がり綱を力ずくで引こうとするが、馬の力に勝てずに制御を失いよろけてしまっている。 御者 「馬がこれ以上先に進もうとしません……!!」  「だろうね。」と言って立ち上がり馬車から出たジョシュアが御者に金貨を渡した。そのまま御者と何かを話しているジョシュアが手で「出ろ」とクリス達に合図をした。馬車を出るともうすぐそこに巨大な門が見える……だが、クリス以外に誰一人としてそこから先に進もうとしない。 ミイラ男 「もう、何やってんの?早く行こうよ!」  何も感じないクリスは「いい加減にしてくれ」と皆の手を引く。御者と話し終わったジョシュアにその事を伝えると、彼は苦笑いをして「まぁそりゃそうだろうね。」と先頭を歩き出した。 もっと厳重な警備や岩のような体格の男達が門を死守しているのだと思っていたが意外にも門には誰の姿も見られず、ジョシュアが取っ手を握るとその巨大な門は自らガシャン……と開いた。 ドラキュラ 「……入って。」

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