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第二話 そなたの帰りを待つ者 5

ジュリア 「……そうでしたか、それでお坊ちゃまがご友人の獣人のご家族をこの屋敷へとお連れになったのですね。」 狼男 「赤の他人だったんだけど、子供達と仲良くなったらどうしても放って置けなくなっちゃってね。」 ジュリア 「ジョシュア様らしいですね。」  ターナー家の膨大な敷地の中にある森へと薪を調達しに行くというジュリアについて来たウェア。その道中、彼はジュリアにこれまでの経緯をざっくりと説明した。彼女のその口調からしてやはりジョシュアは幼い頃から根は優しい少年だったらしい。それを知れたのは友人としても嬉しいものだ。 狼男 「君には家族が居るのかい?」 ジュリア 「えぇ。私の一家は代々使用人として仕えております。私で四代目、ご主人であるエドワード様にお仕えする以前はロイド様と言うヴァンパイア界では有名なお方に仕えていたと聞きました。」 狼男 「君のお父様の話かな?」 ジュリア 「いいえ、私のご先祖様でございます。そのお方と私の祖父にあたるセバスチャンはロイド様に長らくお仕えしていたそうです。その後に父はエドワード様から御縁を頂き、こちらのお屋敷でお仕えする事になったそうです。」 狼男 「ふん……ヴァンパイアにも寿命があるのか。」 ジュリア 「いいえ。祖父がロイド様の元を去ったのはロイド様がお亡くなりになられたからでは無く、ロイド様が契約を破棄されたためです。」 狼男 「え……?」  意外な話の展開に、枝を掴むウェアの手が緩んだ。彼女の話によるとジュリアの一家は召使いで、彼女は四代目、三代目は彼女の父、二代目は祖父。初代の者と彼女の祖父いわゆる二代目はロイドというヴァンパイアに仕えていたが何か訳があって祖父の代でその者に仕えるのをやめたらしい。……一体それはどんな理由であったのだろうか? 狼男 「これ以上聞くのは流石に野暮なのかな……?」  耳をしょぼんと下げ、眉を困らすその眼差しは何とも可愛らしい……まるでおやつをねだる子犬のようだ。 ジュリア 「構いませんわ。私などの話で退屈さが紛れるのなら、いくらでもお話致します。」  「やった!」と嬉しそうに尻尾を振るウェアを見てクスクスと微笑み、ジュリアは茂みに落ちている木の枝を拾い集めながら話を続けた。 ベン 「……こちらに見えますのがご婦人の肖像画でございます。」  初めは客間にあった観賞用の大きな花瓶、大皿、そして天井から吊り下がる豪華に輝くシャンデリア。クリスの好奇心は収まる事なく次から次へと見る物を指差し、これは何なのか、どこで手に入れたのか値段はいくらしたのか…と目を輝かせながら落ち着きなくベンに問い尋ねた。そんなクリスがまるで遠足で遊びに来た子供のようで可愛く、ベンはジュリアを追って客間を出て行ったウェア以外の全員を連れ、屋敷を案内して回った。 ベン 「エドワード様が遠方に出られる度にこうしてお気に召された品をお持ち帰られます故、私がそれをお屋敷にお飾りしているのです。」 ミイラ男 「何一つホコリが被ってない……ベンさんはこのお屋敷では欠かせない人なんだね!」  真っ直ぐで純粋なその瞳に偽りは映らず、それが彼の本心であることが疑わずともよく分かる。骨董品を扱う中、人々の心を簡単に動かしてしまう美しさの宝石をこれまで数え切れぬ程目にしてきたベンだったが、この少年の黄金の瞳はそれらを石ころだと思わせるように美しい。 ベン 「私共はただの召使い、代わりなど幾らでも見つかりましょう。」  その謙虚な姿勢はいかにも召使いらしく、なすべき仕事を完璧にこなし、主に忠実でいるベンには憧れさえ抱いてしまうほどだ。次はどんな品を見せてくれるのだろうか……再び廊下を歩き始めたクリス達は、今まで先頭を歩きエスコートしてくれていたベンがまだ先程の肖像画の前で佇んだままで居ることに気が付き振り返った。 静かに絵をじっと見つめるその横顔はどこか遠い記憶を思い返しているように切なくクリスの目に映ったのだった。

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