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第二話 そなたの帰りを待つ者 7

 微笑みながら前を歩いていたジュリアが急にその足を止める。……森の奥から漂う強い匂いをクンクン…とウェアは感じ取った。 ジュリア 「……お屋敷にお戻りください、今すぐに。」  そう言った彼女の瞳は先程までのヘーゼルグリーンでは無く、鮮やかな赤色をいている……センスを使っているのだろう。思えば初めて声を掛けてきた時もそうだったが、この娘は少しばかり無謀すぎるのだ。ウェアの臭覚だけでも充分に手強い相手だと分かる、彼女の第六感なら尚強くそれを感じられているはずだ……それでも一人で相手をしようと言うのか? 狼男 「君一人で行くのは危険すぎる。」 ジュリア 「お坊ちゃまのご友人に傷一つ負わせる訳には参りません。さぁ、今すぐお屋敷に……」 狼男 「いい加減にしろ!!自分の事をもっと大切にするんだ!」  いつも穏やかなウェアが珍しく怒鳴り声をあげた。その声に反応した小鳥がバサバサっ…と木の葉を叩き散らして飛び去った。きっと今ので相手には気付かれたはず、これ以上議論する意味は無いようだ。先程ウェア達獣人に気付かれずに居られた戦術で偵察に向かうジュリアを後ろでそっと見守るウェア。出過ぎない事だけを固く約束させ、彼女を見送った。自分が行ってやりたい所だが、獣人のウェアは野生の匂いが強すぎてすぐに気付かれてしまう……ここは彼女を信じて待つしか無い。 「……そうか、それは良い情報だ。」  長年家を離れていた弟が連れてきたというミイラの少年、彼がエルフだという事をたった今手下の者から聞き終えたところだ。報告を終えた部下が何かに怯えた様におどおどとしている。 「そんなに冷や汗をかいてどうした?」 「お父上に気付かれました……きっともう俺だとバレています。」 「お前は体臭がきついからな。」  彼がそんな冗談を言うと他の手下達がケラケラと笑う。恥ずかしそうに頬を赤らめながらもその者は続けて忠告をした。 「ライアン様、お父上はこうもおっしゃっていました。その血には相性があり、相性が合わなければ最悪の場合命を落とすと……」 ライアン 「以前にエルフの血を引く女の血を口にした事がある。そいつのは口に合わなくてな、その時はそいつが遠い末裔(まつえい)だったかでエルフの血が薄まっていて体調を崩しただけで助かったが……さて、あの少年の血はどれくらい純粋なエルフに近いのかな?」  日よけの分厚いカーテンをほんの少しだけかき分け、中庭にある噴水の女神像の隣でベンの話を聞いているクリスを品定めするように眺める。もし仮にあの少年がエルフの血を引く者だとすれば、ジョシュアがもう既に手を付けているに違いない。血を飲まずとも臭覚はそこまで衰えていないはずだ。 ライアン 「……あの少年をここへ連れて来い。」  命令を受けた手下がコクっと頷きライアンの部屋を出て行った。

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