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第四話 守らねばならぬもの 2

 -三時間前- 「こちらの部屋へどうぞ。」  そう案内され開かれた扉の中へ入るクリスは誘導されるままにある男の向かいの椅子に腰かけた。……以前にトニーのアジトに連れて来られた時と同じ様なシチュエーションに、自然と胸騒ぎがしてならない。 その男は明るい茶色の短い髪を綺麗に後ろへと流していて、身なりがきっちりと整えられているその恰好からしてもきっとただ者では無いのだろう。艶のある木製の立派な椅子には細かな彫刻が施され、そこに堂々と座る主に良く似合っている。 ミイラ男 「……ジョシュのお兄さん?」  フっと微笑んだその目元にはどことなくジョシュアの面影がある。間違いない、この男はザック達が話していたあのダンテという組織のトップであるライアンだ。……それにしても何故この男は長年(ながねん)家を離れていた弟であるジョシュアではなく、この自分を呼び出したのだろうか? ライアン 「臆病者の弟が迷惑を掛けてはいないか?俺はライアンだ。」  その言葉を聞いてクスっと微笑んだクリスの表情からは緊張が僅かに和らいだように感じられる。 「ほれ。」とライアンから手渡された木箱の蓋を開けると、その中にはジョシュアの幼少期の写真が何十枚も保管されていた。興味津々に一枚、また一枚と写真をめくっていくクリスの嬉しそうな顔を見て、この時ライアンは一体何を思ったのだろうか。 ライアン 「……君がそうだったのか。」  そんな謎多き言葉を聞いたクリスは写真を手にしたまま不思議そうな顔をしてこちらを向いた。 ミイラ男 「……どういう意味?」  しっとりとこちらを見つめるその瞳はジョシュアのものよりも薄く、まるで純度の高い透き通った湖のような綺麗なグレー色をしている。「君がそうだったのか。」この男は一体どんな思いでその言葉をクリスへと向けたのだろうか。ジョシュアとクリスの関係を知っているのか、それとも何か他に言いたい事があるか……クリスは首を傾げて本人からのその答えを待つ。 ミイラ男 「そんな……まさか……」  開かれたライアンの口から放たれたその言葉を聞いたクリスの手から、バサバサバサ…と写真が雪崩のように崩れ落ちた。

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