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第四話 守らねばならぬもの 7

 荷台の陰に隠れ、辺りを警戒している不審な男に狙いを付けた。あの男に間違いないだろう……。 昼食から戻ったダニエルとリーが神堂の扉を開くと、待ちわびた様に扉の前に立つドーナが二人を出迎えた。戻って来て早々に主から依頼を受けた二人は早速、指示された場所へと移動したのであった。そこは貿易のために沢山の荷を載せた馬車が何台もガタゴトと行き交う、街と街を繋ぐ一本の大通り。その隅で何やらこの日中の温かい気候には似つかわぬ恰好をした男が一人、挙動不審に荷台の周囲をうろついているのが見える。 ダニエルはリーに奴の後方を見張るよう指示をし、スーっと姿を消し身を隠した二人は例の男を各々違う角度から監視し始めた。モズでなくともこの男が怪しい動きをしているのは一目瞭然だ、その上怪しくフードを深く被りその顔を必死に隠そうとしている。  -二時間前- ドーナ 「戻ったか……何を食べてきたのだ?」  そう言えばあの店にまだ母を連れて行ったことがなかった。新しもの好きな彼女のことだ、きっと気に入るだろう。隣にいるリーからその料理の感想を聞くドーナはとても嬉しそうだ。 ダニエル 「今度……」 ドーナ 「それほどに美味であったのなら、次にすべきことは分かっているであろうに。」 リー 「えぇ、次回は必ずお誘い致します……この私の同行で良ければ。」 ダニエル 「………。」  ふふふっと微笑むドーナはリーの優しい瞳を見つめている。そのすぐ隣に居る息子の姿は映っているのだろうか?……この神堂内でムスっとした顔をしているのはダニエルだけでは無かった。ふと向こう側の席に目をやると、同じ様な表情をした水色の髪色をした男が十二の中の一つの椅子に座り、不機嫌そうに腕を組んでいる。ダニエルはその男の元へ行きこう話し掛けた。 ダニエル 「負け組同士、仕事の話でもしようか。」 グリフィン 「……同士と言ったか?」   ダニエル 「いつまで隠してるつもりだよ、さっさとドーナを口説いちまえば良いだろ。」 グリフィン 「ケルスを何だと思っている?くだらぬ情愛が判断を鈍らせ、この死神界をも滅ぼす。我らトップに立つ者には許されぬのだ。」  スパイやら裏切りやら誘拐やら……。日常的に起こる物騒な事件の数々を処理していく毎日だ。そんな中で、この者が死神界のトップに立つケルスの一員であるという事につくづく安心するものだ。 ダニエル 「じゃあもし……ドーナがサランドに人質にとられたら、あんたどうする?」  この男はきっと迷いなくドーナを選ぶであろう。なぜなら組織も民も、この死神界さえも彼女以外に大切なものなどグリフィンには無いからだ。 ……そしてそれはダニエルもまたしかり、あの時に選んだのは未来ある二人では無く、ただ自分の愛した者だけ。この質問をしたダニエルをただそっと見つめるグリフィンはこう問い返した。 グリフィン 「それはわしへの質問か?それとも……お前自身への問いか?」 ダニエル 「………!」  「なんでもない。」と背を向けた息子の背中に、グリフィンは続けてこうも回答した。 グリフィン 「わしならばドーナを見殺しにする。」

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